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核抑止に向き合う 長崎から問う被爆国の針路・2 【日米同盟】 「軍拡傾向」で進む深化

2023/08/01 掲載

 5月19日、米原子力空母ニミッツが長崎県の佐世保港に巨大な船体を現した。9年ぶりの米原子力空母の佐世保入港。23日まで寄港し、広島市での先進7カ国首脳会議(G7広島サミット、19~21日)期間中、西方ににらみをきかせる形となった。
 元海上自衛隊佐世保地方総監の香田洋二さん(73)は「サミットをぶち壊さないよう、やんわりと軍事力を見せる格好で中国や北朝鮮をけん制する意味合いはあっただろう」と語る。
 核戦力を増強する中国や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮など、緊迫の度を増す中、米国との同盟を基軸とする日本の安全保障の最前線に本県が位置することをあらためて印象付けた。ロシアは核のどう喝を繰り返しながらウクライナ侵攻を続け、米国を中心とした西側諸国と中ロとの対立は世界の核情勢にも暗い影を落としている。
 長崎大核兵器廃絶研究センターが6月に発表した世界の核弾頭数は推計1万2520発。昨年より200発減ったが、退役・解体待ちを除く「現役」は9587発で逆に84発増えるなど、「実質的な軍拡傾向にある」と分析する。
 こうした状況下で日本は米国の「核の傘」を含む拡大抑止の強化を図る。昨年12月に閣議決定した安保関連3文書の一つ、国家防衛戦略では「核兵器の脅威に対し、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠」と明記。「米国の拡大抑止が信頼でき、強靱(きょうじん)なものであり続けることを確保するため、日米間の協議を閣僚レベルのものも含めて一層活発化・深化させる」としている。
 防衛省防衛研究所サイバー安全保障研究室の一政祐行室長は「核抑止力だけではなく、通常戦力やサイバーなど領域横断的な作戦能力を組み合わせて抑止力を強化するという意味」と解説。「反撃能力保有もその一環で、日米の政策的な方向は一致している」とする一方、外交交渉による軍備管理・軍縮との「両輪」が不可欠だと強調する。
 米国の核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」にも「抑止力だけでは核の危険は減らない」との記述があるという。一政室長は「安定性の強化や軍拡競争の回避、世界的に核兵器の役割を引き下げるためにも軍備管理や核リスク低減が不可欠だからだ」と話す。
 「非核三原則」を国是とする日本。核抑止力と実は表裏一体で、その源流はベトナム戦争下、「動く核基地」と称された米原子力空母エンタープライズが国内で初めて佐世保に入港した1968年1月にさかのぼる。