核大国に挑んで
 =NPT会議ニューヨーク報告= 6

「一万人署名」の活動に取り組む山田詩郎さん(右)=1日、ニューヨーク・セントラルパーク

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核大国に挑んで =NPT会議ニューヨーク報告= 6 新 世 代
「ナガサキを世界に」

2005/05/26 掲載

核大国に挑んで
 =NPT会議ニューヨーク報告= 6

「一万人署名」の活動に取り組む山田詩郎さん(右)=1日、ニューヨーク・セントラルパーク

新 世 代
「ナガサキを世界に」

「『青年の集い』っていう交流集会の後、日本人六人、外国人六人で食事をすることになった。英語は何とか聞き取れたが、フランス語の人もいて…。だけど、平和への思いは、(翻訳に使った)電子辞書からしっかり伝わってきた」

県原水協の派遣団に参加した長崎市職員の近藤大樹さん(24)。所属する労働組合の集会で二十四日夜、ニューヨークでの様子をこう報告した。

「夏の原水禁大会。これまで自分は“お客さん”だった。今年は、大会をつくっていく側で何か力になれたら、と思う」。ニューヨークでの体験は、こんな決意にもつながった。

同じ派遣団の領家由希さん(22)=長崎大医学部三年=。大学で平和や国際協力を考えるサークルに所属している。

「難しく考えたり、構えたりする必要はないんだ、と思った。運動を続ける自信が持てたような気がする」。領家さんは、にぎやかな反核ラリーの参加者の輪の中でそう考えた。
被爆地の若い世代にとって、被爆者と行動をともにし、核兵器廃絶を願う世界の“仲間”と出会った米国での活動は、平和への思いを新たにする貴重な機会になった。

県内の高校生でつくる「一万人署名活動実行委」の山田詩郎さん(19)=長崎東高三年=は昨年夏まで一年間、米国に留学した。「この国の人が核兵器はいらない、と思ってくれないと核兵器はなくならない」―。その時から思いは変わらない。だが、留学中は「考えの違う人もいる」とホームステイ先の反対に遭い、その思いを行動に移すことはできなかった。

県原水禁の派遣団に加わった今回、分刻みの日程の中で、署名集めにも取り組んだ。「あなたの大切なものは」―と、身近な場所から平和を問い掛ける「I〓(アイラブ)カード」にも確かな手応えがあった。

現地の高校を訪問した時、被爆者の下平作江さん(70)=長崎市油木町=が一緒だった。内臓の手術を幾度も重ねながら、病を押して渡米し、被爆の実相を語り続ける下平さんの使命感が何よりも印象に残った。あらためて胸に刻んだ。「ナガサキを世界に広げる役割があるのだ」―と。

帰国後。山田さんは留学時代の仲間に、ニューヨークでの活動を報告しながら「一万人署名」への協力を呼び掛けるメールを送った。「ぜひ協力したい」。ブラジル、インドネシア、それに核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドの友人から早速、返事が届いた。

【編注】「I〓(アイラブ)カード」の「〓」はハートマーク