踏み出す時
 NPT再検討会議を前に 上

NPT再検討会議の行方が楽観視できないと指摘する土山氏=長崎原爆資料館

ピースサイト関連企画

踏み出す時 NPT再検討会議を前に 上 波乱要因
国際包囲網に危うさ

2010/04/27 掲載

踏み出す時
 NPT再検討会議を前に 上

NPT再検討会議の行方が楽観視できないと指摘する土山氏=長崎原爆資料館

波乱要因
国際包囲網に危うさ

世界の核軍縮、核拡散防止、原子力の平和利用について方向づける核拡散防止条約(NPT)再検討会議が5月3~28日、米ニューヨークの国連本部で開かれる。核の恐ろしさを伝え、核廃絶へ向けて各国にプレッシャーを掛けるため、被爆地長崎からも多くの被爆者、市民が渡米する。オバマ政権下の米国を軸に核削減などを目指す動きが続いており、会議の行方に世界の目が注がれる。被爆国、そして人類は核廃絶への新たな地平に踏み出すことができるのか。

「米国が今月発表した新核戦略指針『核体制の見直し』(NPR)は、北朝鮮とイランを除くNPTを順守する非核国に核攻撃をしないとした。イランなどを非常に刺激している」。長崎市内で17日あった非政府組織(NGO)核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委のNPT代表団壮行会のあいさつで、土山秀夫委員長(85)はNPT再検討会議が決して楽観視できるものではないと強調した。米国などによる国際的包囲網の中、ウラン濃縮活動を継続するイランなどの底深い不満は確実にたまっており、波乱要因という。

「(ブッシュ政権下で核保有国と非核保有国が決裂した)2005年のNPT会議の二の舞いにならないとも限らない」

成功したとされる00年の前々回のNPT再検討会議では、核廃絶を主張する国家グループ「新アジェンダ連合(NAC)」が、核保有国に「核兵器廃絶への明確な約束」を受け入れるよう強く要求。その結果「明確な約束」を軸とする13項目の核軍縮合意が最終文書に盛り込まれた。

しかし、今回はNACのような動きはない。だからこそ各国政府と交渉し、つなぎ合うNGOの役割がより一層重要になっている。「被爆地からの訪米もNGOへのバックアップと励ましの意味合いが強い」。土山氏はそう指摘する。

NPT再検討会議で、被爆国である日本政府はどのような役割を果たしうるのか。会議に向けた14日の外務省と主要NGOの意見交換会。核兵器の「唯一の目的」を敵の核攻撃抑止に限定し、核の役割を低下させる政策の提案を求めるNGO側に対し、外務省の西村智奈美政務官は「今回は難しい」との考えを示した。

「唯一の目的」策は、岡田克也外相自身が理解し、こだわってきたはず。「外務省は岡田外相の足を引っ張っているのではないか」。出席した実行委の朝長万左男長崎原爆病院長(66)はそう感じた。