踏み出す時
 NPT再検討会議を前に 中

核廃絶に向けた政治家の行動の必要性なども指摘したエリカ・バニャレロ監督(右)=長崎中央公民館

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踏み出す時 NPT再検討会議を前に 中 政府の姿勢
リードする気概なく

2010/04/28 掲載

踏み出す時
 NPT再検討会議を前に 中

核廃絶に向けた政治家の行動の必要性なども指摘したエリカ・バニャレロ監督(右)=長崎中央公民館

政府の姿勢
リードする気概なく

核兵器の目的を敵の核攻撃抑止に限定し、核の役割を低下させる「唯一の目的」策などで外務省と意見交換した非政府組織(NGO)、核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委の朝長万左男長崎原爆病院長(66)は「外務省は(『唯一の目的』策を)時期尚早と考えている」と語る。

国際情勢を見回しながら核不拡散と核軍縮のバランスを探る核保有国。政権交代後の日本政府も横並びの姿勢で、核廃絶で世界をリードしようという被爆国の気概はみられない。

「外務省は化学兵器、生物兵器、通常兵器による侵攻、侵略を核兵器で抑止してもらうべき地域が世界各地にあり『核の役割は核抑止だけ』とはまだ宣言できないとみている。急に進めると世界の安全保障が揺らぐとの考えだ」と朝長氏。

岡田克也外相が3月、発表した核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた日豪両政府提案には「唯一の目的」策は盛り込まれず、NPTを順守する非核国への核攻撃をしないよう核保有国に求めた「消極的安全保障」は、米国が4月上旬に発表した「核体制の見直し」(NPR)とほぼ同じ内容。

外務省との意見交換に出席したNGO、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会の森瀧春子共同代表(71)は「日豪提案を米国以外の核保有国が受け入れるかどうかは注目されるが、『唯一の目的』策も含めて核抑止力が前提の論理。真の核廃絶には至らない。法的規制を掛ける核兵器禁止条約の交渉に早く着手させなければならない」と指摘する。

米国の「核の傘」についても、外務省は北朝鮮の核開発や中国の軍拡を抑え込むには必要という従来の外交政策を維持する。だが、昨年4月の日本軍縮学会シンポジウムでは元外交官が「日本の安全保障をアメリカの核抑止に頼るような冷戦時代からの思考停止をやめるべきである」と発言。朝長氏は「外務省内でもせめぎ合っている面がある」とみる。

被爆者のドキュメンタリー映画「フラッシュ・オブ・ホープ」の上映会のため来崎したエリカ・バニャレロ監督(29)=コスタリカ出身=は18日「広島、長崎に原爆が投下され、人間に何が起きたか海外で知られないまま核開発の時代に入り、膨大な数の核兵器が生み出された。減らし、そしてなくすには原爆(の実相)をまず分かりやすく海外に伝えること。そして世界の政治家が意識を変化させ、危機感を持って行動に移すことが必要」と語った。被爆国の政治家と政府の姿勢も厳しく問われている。