私はこう思う
 被爆地五輪インタビュー 3

「これまでと違う『新しい形の五輪』を提案する必要がある」と話す松藤氏=長崎市桜町

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私はこう思う 被爆地五輪インタビュー 3 長崎商工会議所会頭
松藤悟氏(80)
新たな形の大会提案を
客船を宿泊施設に利用も

2009/10/26 掲載

私はこう思う
 被爆地五輪インタビュー 3

「これまでと違う『新しい形の五輪』を提案する必要がある」と話す松藤氏=長崎市桜町

長崎商工会議所会頭
松藤悟氏(80)
新たな形の大会提案を
客船を宿泊施設に利用も

-招致をどう思うか。

最初に感じたのは「本当か」という驚き。(核兵器廃絶に向けた)平和都市として共催したいという理念は賛成で、広島、長崎両市が提案した意義は大きい。ただ、招致するための資金面の問題は大変なこと。課題があまりにも多すぎる。

-課題は。

(五輪憲章で認められていない)共催を可能にできるかが、最初の関門。五輪の考え方を根本的に変えなければならない。大会に向けて施設を整備する従来の都市型五輪では、両市は対応できない。どういう形が理想なのかは想像できないが、これまでと違う「新しい形の五輪」を提案する必要がある。

-宿泊施設など受け入れ態勢の問題は。

あれだけの選手、観客を受け入れるのは大変で、簡単に解決できない。ただ、可能かは別として、(長崎港に)客船をとめて宿泊施設にするのは一つのアイデア。一時的に何千人もの宿泊先を確保できる。五輪を契機に新しい事業が生まれればいいが、むやみに宿泊施設を増やし、五輪後に使われなければ困る。

-招致が、九州新幹線長崎ルートなど基盤整備を促進するという声もある。

五輪に関係なく、新幹線は長崎に必要だと考えてわれわれは取り組んでいる。ただ、政権交代で整備の先行きは見えにくくなった。招致するためには基盤整備は必要で、いろいろな問題が片付くかもしれない。

-経済効果は。

計り知れない効果がある。多くの人が長崎を訪れ、施設整備も進む。平和都市として世界中に知ってもらえるので、五輪後も(観光で)訪れる人は増えるはず。ただ、招致への課題は山積みで、単純にプラス面だけでは考えられない。開催までの約10年間は、準備費用が必要で、効果を得るまでの時間は長い。

-広島経済界とのつながりは。

広島市の商工会議所と特別な付き合いはない。招致活動が具体化すれば、当然、経済界の交流も深まっていくだろう。北部九州で協力して進める話も挙がっているので、招致運動を経験している福岡市には、知恵を借りていくことになるかもしれない。

-両市が設置する招致検討委へのかかわりは。

(経済界から)提案するべきことはあるので、要請があれば、前向きに考えたい。

【略歴】まつふじ・さとる 松藤商事(長崎市)を中核とする松藤グループ代表。2004年から長崎商工会議所会頭。県商工会議所連合会会長、県トラック協会会長、長崎・ノルウェー友好協会会長などを務める。