私はこう思う
 被爆地五輪インタビュー 4

「まずは長崎国体へ向けた準備を」と話す岡崎氏=長崎市、長崎新聞社

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私はこう思う 被爆地五輪インタビュー 4 九州陸協理事長
岡崎寛氏(65)
「壮大な夢」現実と遠く
まずは長崎国体の準備を

2009/10/27 掲載

私はこう思う
 被爆地五輪インタビュー 4

「まずは長崎国体へ向けた準備を」と話す岡崎氏=長崎市、長崎新聞社

九州陸協理事長
岡崎寛氏(65)
「壮大な夢」現実と遠く
まずは長崎国体の準備を

招致をどう受け止めているか。

目の前で世界最大のスポーツの祭典が繰り広げられるなど願ってもないこと。ただ、現実とかけ離れている。「壮大な夢」だと思っている。

開催意義をどうとらえているか。

核廃絶の願いを掲げた五輪という目的は素晴らしい。被爆地の広島、長崎以外にどこで開けるか、と問われたらほかにない。平和をアピールする最高の機会になる。五輪憲章では複数都市の共催は認められていないが、もしこの規定も変えることができて開催が実現できれば、歴史に残る五輪になるだろう。

施設の問題が大きくかかわってきそうだが。

五輪開催が可能な規模の競技施設を造るにも、長崎市内に場所はどこにあるのか疑問。もしできたとしても、大きすぎて活用法もない。2013年春に完成予定の新県立総合運動公園陸上競技場(諫早市)は収容人数が2万人規模。長崎にはそれぐらいがちょうどいいだろう。他県の例を挙げると、02年サッカーW杯日韓大会にあわせて造られた大分スポーツ公園九州石油ドーム(大分市)は4万人規模。確かに立派な施設だが、持て余して困っているとも聞いている。

14年の2巡目長崎国体と絡めて考えられるか。

国体と五輪では次元が違うので比較は難しい。ただ、長崎国体を成功させられるのかどうかという段階で考えても、不安があるのが現状。長崎市は芝生、照明など細かい点でも改修が必要な施設が多すぎる。まずは現実として、開催が迫っている国体に向けた準備を進めるべきだ。

日本陸連の理事としても、全国各地の大会へ行く機会は多い。他県のスポーツ関係者の反応は。

誘致検討の表明が報道された11日は「長崎オリンピックですね」と声を掛けてくる人もいたが、最近は話題にも挙がらない。おそらく関係者も、現実的なものとして見ていないのでは。

長崎市の今後の動きについて提言を。

「五輪開催」ということについて、周りも少し騒ぎすぎている。もっと冷静に現実を見つめてほしい。16年五輪招致に落選した東京都が立候補に費やした金額は約150億円だという。長崎市が本気で招致に取り組むのであれば、金銭面を含め、相当の覚悟がいることを忘れてはならない。

【略歴】おかざき・ひろし 佐世保市出身。東京教育大(現・筑波大)を卒業後、1985年から長崎県立国際経済大(現・長崎県立大)の教授を務める。94年に長崎陸協の理事長、2005年に日本陸連の理事、09年4月には本県から初めて九州陸協の理事長に就任。