決意の夏
 =ナガサキ再構築へ= 3

平和行政アンケートの集計を進める川口龍也さん=長崎市内

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決意の夏 =ナガサキ再構築へ= 3 非核宣言
自治体に“温度差”

2005/07/27 掲載

決意の夏
 =ナガサキ再構築へ= 3

平和行政アンケートの集計を進める川口龍也さん=長崎市内

非核宣言
自治体に“温度差”

「現在、空白になっている諫早市には、市民を交えた宣言の起草委員会ができた。西海市も秋の議会で協議を予定している」―。長崎市内で二十二日夜開いた市民団体「非核の政府を求める県民の会」の総会。事務局長の川口龍也(69)が柔らかな表情で報告した。

「県民の会」は一九八七年に発足。県と県内の全自治体に「非核・平和都市宣言」を求めてきた。九九年三月、当時の旧対馬美津島町を最後に全自治体の宣言が出そろったが、「平成の大合併」で自治体の枠組みが激変。「宣言率100%」の維持は同会の大きな活動テーマになっていた。

諫早市と西海市の取り組みで、表面的には、再び「被爆県」で全自治体の足並みがそろう。ただ、自治体間のギャップはとてつもなく大きい。

同会は二〇〇〇年から、各自治体の平和行政を多角的に問うアンケートを続けている。昨年の調査では「平和関連予算」の計上自治体が72%まで伸びた。しかし、被爆地・長崎市の二億七千九百万円から、幾つかの町の「非核自治体協議会負担金二万円」まで、その額は天と地ほどの開きがある。

新たな動きへの対応も総じて鈍い。

昨年の調査では、国際NGO「平和市長会議」が提唱する「核兵器廃絶のための緊急行動(2020ビジョン)」への姿勢を質問。今年はビジョンに呼応した計画の有無を尋ねた。

ビジョンについて「賛同・支持」を表明した自治体は全体の八割近い五十五に上った。ところが、今年の質問に「計画がある」と答えた自治体は、二十四日までに回答を寄せた三十五自治体のうち、五つしかない。

長崎市の隣で、原爆投下直後、町内の数カ所に救護所が設置された西彼長与町の「広報ながよ」七月号。見開きで平和特集を組み、左面には「町平和週間」の多彩なプログラムが並ぶ。「ここまでくると、たいしたもんです」と川口は笑顔を見せるが、こうした”優等生”は少数派だ。

被爆地の思いを政府レベルで共有し、国際社会に「被爆国」としてその声を届ける―。各自治体に粘り強く非核宣言を呼び掛け、平和行政の拡充を訴えてきたのは、そのためのステップだ。

「町の財政はどこも厳しい。無理は言えない」。川口は静かに集計を続ける。だが、回答用紙の向こうには「被爆県」の心もとない足取りが透けて見える。(文中敬称略)