決意の夏
 =ナガサキ再構築へ= 2

被爆地の果たすべき役割を語る土山秀夫さん=長崎市内

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決意の夏 =ナガサキ再構築へ= 2 明確な約束
被爆地の声に自信を

2005/07/26 掲載

決意の夏
 =ナガサキ再構築へ= 2

被爆地の果たすべき役割を語る土山秀夫さん=長崎市内

明確な約束
被爆地の声に自信を

「私たち被爆地の市民からすれば非常に残念なことだけど、今度ばかりは、土壇場のどんでん返しは期待できない」

四月―。核問題に詳しい長崎大元学長の土山秀夫(80)は、開幕前から核拡散防止条約(NPT)再検討会議の失敗を断定的に分析していた。

予言は的中した。

会議の行方の鍵を握っていた核大国・米国には、何かを前進させようという思いなど、かけらもなかった。同時に、非核保有国の側も、何らかの合意を求めて保有国にすり寄ることはなかった。

「不幸中の幸い」―。土山は再検討会議の結末をこう表現する。決裂を避けるためだけの妥協の産物が「最終合意」として残るぐらいなら何もない方がましだったし、米国が何と言おうと、二〇〇〇年の「核廃棄への明確な約束」は生きている。「今回の会議が何の合意も約束も残せなかったのだから、次の出発点は二〇〇〇年の合意だ」―と。

ただ「気掛かりはNGO(非政府組織)の委縮だ」と言う。

「今、米国で反核を言うことは、必然的に反ブッシュを唱えることになる。だが、同時テロの傷が癒えない今の米国社会では、その主張は『非愛国者』のレッテルを張られることにつながるのだろう」

「だから、もう一度、長崎に集まってもらおうと思うんです」―。内外のNGOに結集を呼び掛ける「第三回地球市民集会」を来年秋、長崎で開催することを土山は提唱している。

ナガサキに来て良かった、サバイバー(被爆者)から勇気をもらった―。実行委員長を務めた過去二回の集会では、海外のNGO関係者がそう口をそろえた。「来年秋」は、次の再検討会議のための準備委が始まる〇七年をにらんだタイミングだ。県と長崎市が新年度の予算案編成に入る今秋までには、集会の構成の骨組みを固めたいと考えている。

被爆地が果たすべき使命は明快だ、という。「もちろん、いろんな意味の検証や点検は必要だろう。だが、核兵器廃絶を求める今までの運動や主張は、間違いでも何でもなかった。被爆地の声が世界の背中を押してきた。だから自信を持って積み重ねていくことが大切なんです」。土山は繰り返す。(文中敬称略)