核大国に挑んで
 =NPT会議ニューヨーク報告= 4

連合などが開いた米国の労働団体との交流集会。閉会後も活発な意見交換が続いた=3日、ニューヨーク

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核大国に挑んで =NPT会議ニューヨーク報告= 4 視 線
「謝罪」求める声も

2005/05/24 掲載

核大国に挑んで
 =NPT会議ニューヨーク報告= 4

連合などが開いた米国の労働団体との交流集会。閉会後も活発な意見交換が続いた=3日、ニューヨーク

視 線
「謝罪」求める声も

二〇二〇年の核兵器全廃を提唱する「2020ビジョン」への賛意が相次いだ五月三日の「平和市長会議」セッションで、一つだけ明らかに異質な発言があった。

「日本は、第二次世界大戦当時の中国や韓国、東南アジアに対する軍国主義の歴史的な過ちについて、まず謝罪すべきだ。それがあって初めて、私たちは共に前に進むことができる」

東洋系の女性が、まくし立てるように言い放ち演壇を降りた。米カリフォルニア州の女性市議。中国生まれの台湾育ちで、二十歳の時に米国に移住したという。

尋ねてみた。あなたは、広島市長や長崎市長の発言に同調できないのか―。「誰だって戦争は望まない。戦争で死ぬのは、誰かの夫や妻や父や子だ。ただ、それでも、歴史と正しく向き合うことは不可欠でしょう」

最後は逆に問い掛けるような調子だった。アジアへの加害に対する反省を抜きに、日本が原爆の”被害”だけを振りかざすのはおかしい―。そんな感情がうかがえた。

同じ三日。国連本部向かいの「チャーチ・センター」で連合などが開いた米国の労働団体との対話集会。ゲストの一人として出席した外務省の小笠原一郎軍備管理・軍縮課長に、韓国人の女性が詰め寄った。

小笠原課長は、核拡散防止条約(NPT)再検討会議で日本が提案した「二十一世紀のための二十一の措置」を説明。しかし「唯一の被爆国」との表現に対し、女性は「韓国にも北朝鮮にも被爆者はいる。日本は何をしてきたのか」と反発したのだ。

さらに、北朝鮮の核計画をめぐって「日本は脅威にさらされている」との発言にも、北朝鮮の”国力”などに触れながら「誇張だ」と迫った。「国内にいては、なかなか直面しない質問でした」。小笠原課長は硬い表情で感想を話した。

同じビルの八階ではこの日、原水禁国際スタッフの金生英通さん(46)ら数人が、青森県六ケ所村の核燃料再処理工場計画に関する勉強会を開いていた。「核保有国以外で初めての大規模再処理工場。『日本がいいのなら、われわれも』と国際的な核拡散に口実を与えてしまいかねない」。金生さんらは言う。

「唯一の被爆国の政府として、核兵器廃絶に先導的な役割を果たすべき」―被爆地・長崎の主張だ。しかし「被爆国」に対する視線は決して一通りではない。