届けナガサキの声 
 =NPT再検討会議を前に= 3

「もう一度、平和活動にかかわるきっかけにしたい」と語る一ノ瀬仁美さん=長崎新聞社

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届けナガサキの声 =NPT再検討会議を前に= 3 一ノ瀬仁美さん 手探り、でも「伝えたい」

2005/04/17 掲載

届けナガサキの声 
 =NPT再検討会議を前に= 3

「もう一度、平和活動にかかわるきっかけにしたい」と語る一ノ瀬仁美さん=長崎新聞社

一ノ瀬仁美さん 手探り、でも「伝えたい」

「署名をお願いします」

長崎原爆の日を控えた昨年八月七日、原水禁大会が開かれていた長崎ブリックホールのロビー。慌ただしく行き交う参加者らに向かい、核兵器廃絶を訴える高校生一万人署名活動実行委の明るい声が響いた。

そのそばで、照れくさそうに立つジーンズ姿の大学生。同実行委OGの一ノ瀬仁美さん(19)=長崎総合科学大二年=。後輩たちの活動場所に顔を見せたのは、久しぶりだった。

高校三年の夏は、署名活動の中心的存在だった。だが、「大学生になって、高校生中心の活動にどうかかわったらいいのか分からなくなった」。夢中だった署名活動と少しずつ距離を置くようになった。

昨年十二月、同実行委の卒業生でつくるグループ「21世紀平和ネットワーク」の集まり。「来年五月のNPT再検討会議に行きたい人、手を挙げて」。先輩の呼び掛けに少し心が動いた。

それでも踏ん切りがつかず、時だけが過ぎた。「行く人は元高校生平和大使の人だったり、英語ができる人だったり。私なんか無理」

最終の締め切りが迫った三月初め。一本のメールが一ノ瀬さんの携帯電話を揺らした。「今年は被爆六十年。長崎をアピールしたいなら来てほしい」。先輩の草野史興さん(20)=筑波大三年=からだった。

「もう後悔したくない」。一ノ瀬さんは二年前、国連欧州本部に被爆地長崎のメッセージを届ける高校生平和大使の選考会を当日キャンセル。「納得して選考会に行かなかったはずなのに、後からすごく後悔した」。その時の苦い思い出が、背中を強く押してくれた。

ニューヨークでは、反核非政府組織(NGO)の大集会に参加し、出会った人たちに平和への思いを書き込んでもらう「I〓」カードを広めるつもりだ。旅費は一年間で稼いだアルバイト代を充てる。「何が伝えられるか分からない。でも、もう一度活動にかかわるきっかけになるはず」

署名をどんどん広げれば、核兵器廃絶は実現する―。高校時代はそう信じていた。だが、今は違う。「ニュースでよく言う『核兵器を取り巻く厳しい情勢』って何、NPT再検討会議って何―と聞かれたら、正直詳しく答えられない」

今の自分に自信はない。けれども、伝えたいことがある。「被爆地に生まれた一人の若者として、高齢化した長崎の被爆者の姿を、風化しつつある原爆の記憶を」

【編注】〓はハートマーク