認定行政を問う
 =原爆症 集団申請へ= 2

男性の甲状腺がんの原因確率の一部。縦軸が被爆時年齢、横軸が被ばく線量で、表の中にパーセンテージが示されている

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認定行政を問う =原爆症 集団申請へ= 2 原因確率
新指標に被爆者反発

2002/07/07 掲載

認定行政を問う
 =原爆症 集団申請へ= 2

男性の甲状腺がんの原因確率の一部。縦軸が被爆時年齢、横軸が被ばく線量で、表の中にパーセンテージが示されている

原因確率
新指標に被爆者反発

長崎市内の被爆者の平均年齢が今年、七十歳を超えた。「被爆者に残された時間を考えると、国の認定行政の在り方を早く転換させなければならない」。日本被団協事務局(東京)は、原爆症認定の集団申請に取り組む動機をこう説明する。

厚生労働省の疾病・障害認定審査会原爆被爆者医療分科会が昨年五月、被爆による発病リスクを疾病ごとに算出した新しい指標を導入したことも被団協を刺激した。

導入以降の認定状況は、審査数八百五十五件に対し、認定百八十四件。認定率は21・5%で、それ以前より、さらに低下してしまった。

新しい指標は「原因確率」と呼ばれる。

白血病や胃がん、大腸がんなど疾病ごとに、被爆と関係する確率を、性別・被爆時年齢や被ばく線量に応じて一覧表で提示。原因確率が(1)おおむね50%以上の場合は原爆放射線による健康影響の可能性があることを推定(2)おおむね10%未満なら可能性が低いと推定―などとした。

被ばく線量は、日米合同の検討委員会が一九八六年につくった推定計算式、DS86に従来通り依拠している。主に被爆距離に応じた線量を示すDS86には、個々の原爆被害を反映していないとの批判が付きまとい、被爆者たちは「被爆距離二キロ以遠の放射線の影響を切り捨てている」と反発してきた。

疑わしきは認定を、と求める被団協にとって、今の審査は「DS86と原因確率に偏重している」と映る。だが、同省健康局総務課は「数字だけで審査するのではなく、申請者の既往歴、環境因子、生活歴なども総合的に勘案している」と“機械的”との指摘に反論する。

被爆者医療に重点的に取り組む日赤長崎原爆病院の田口厚院長は「疾病と放射線の関係は分野ごとに解明度に差があり、審査はその時点の医学研究の成果を踏まえながら改善していくしかない。国も十分ではないが、その努力はしていると思う」と見るが、「学術的ではあっても、臨床的な視点が足りない感は確かにある」とも話す。

メ モ
疾病・障害認定審査会原爆被爆者医療分科会 原爆症認定は、すべての申請が同分科会に諮られ、その意見を聞いて厚生労働大臣が決定する。申請却下に対する異議申し立ても、同分科会が審査する。現在の委員は医師17人。会長は佐々木康人・放射線医学総合研究所理事長。申請から結果通知までは数カ月かそれ以上かかる例もある。同省は「徐々にスピードアップが図られている」としている。