「描きたいもの全部あった」 長崎・五島で「きみの色」上映会 山田尚子監督が魅力を語る

長崎新聞 2025/02/25 [11:10] 公開

映画の製作秘話や五島市の魅力を語る山田監督=五島市、福江文化会館

映画の製作秘話や五島市の魅力を語る山田監督=五島市、福江文化会館

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五島市など長崎県各地が舞台のアニメ映画「きみの色」の無料上映会が23日、五島市の福江文化会館で開かれ、山田尚子監督が登場。トークセッションで長崎県について「美しい景色や人柄の温かさ、人と人との距離感も心地よく、描きたいものが全部詰まっていた」と魅力を語った。
 昨年上映の「きみの色」は「映画けいおん!」などを手がけた山田監督のオリジナル作品で、悩める高校生3人がバンド活動を始め、心を通わせながら成長していく物語。第26回上海国際映画祭では、金爵賞アニメーション最優秀作品賞を受賞した。
 久賀島の旧五輪教会堂などがモデルとなった五島市で、市民ら約500人が鑑賞。上映後のトークセッションで、山田監督は「行く先々で海の色が全て違うことに驚き、感激した」とし、多彩な色を作品に反映させるよう意識したと紹介。
 事前ロケで市民と触れ合い「優しくてすごく距離が近い」と印象を語り、その経験が作品のキャラクター造形に影響を与え、主人公を「優しい柔らかい人」として描くきっかけになったと製作秘話を披露。また、色とりどりの紙テープで島を離れる人々を見送る様子に遭遇。その感動が別れのシーンにつながったことを明かした。
 同市出身のアニメーション映画美術家、故山本二三さんにも言及。「山本さんが過ごされた場所をモデルにしようとしていたなんて、すごいことをしていたと気づいた」と笑いを誘った。
 来場した同市の大草美沙さん(43)は「五島ならではの別れの風景が描かれて、親近感を覚えた」と話し、池尻知鶴子さん(43)は「離島の子が島を離れる際の心情がうまく描かれていた」と共感。東京から訪れた西山恭一郎さん(62)は「五島に来て、映画に込められたメッセージがより深く理解できた」と話した。