本木雅弘さん主演でドラマ化…被爆者の「声」集めた長崎の元記者がモデル、8月にNHKで

長崎新聞 2025/05/07 [12:00] 公開

本木雅弘さん(NHK提供)

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  • 伊藤明彦さん
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生涯をかけ、千人以上の被爆者の「声」を集め続けた元長崎放送記者の伊藤明彦さん=2009年に72歳で死去=。被爆80年となる今年8月、伊藤さんをモデルにしたドラマ「八月の声を運ぶ男」(89分)がNHK総合で放送されることが決まった。主演は本木雅弘さん。

 本木さんは「人類共有の財産として、被爆者体験を結晶化させることが伊藤さんのひそかなる野心でした。私自身も大きなうねりを生む歯車の一つになるべく真摯(しんし)に取り組みたい」とコメントしている。

 伊藤さんは長崎の入市被爆者。長崎放送入社後、「被爆証言の記録は被爆地のジャーナリストの使命」との信念から、被爆者が体験を語るラジオ番組を始めた。1970年に退社すると、録音機材を携え、全国の被爆者約2千人を訪ね歩き、1003人分の音声証言を収録した。録音テープは全国の図書館などに寄贈。2008年にはその功績が認められ、吉川英治文化賞を受賞した。

 ドラマは伊藤さんの著書「未来からの遺言」が原案。1970年代の日本を舞台に長崎の放送局出身のジャーナリストが被爆者の男性と出会い、その「声」に心を激しく揺さぶられるも多くの謎に満ちていたという実話を描いている。

 脚本は大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」などを手がけた広島県呉市出身の池端俊策さん。46年生まれで小学生の頃、胎内被爆者の同級生がいたが被爆者であることを明かさず、後になって知った池端さんは寡黙の背景には当事者が抱える「大きな不幸」があり、それは人類が背負ったものと思ったという。「このドラマはそういう寡黙な人たち千人余りの声を録音し、後世に残そうと奔走した人物の切実で不思議な体験を描く」と話している。