農水産業でのAI活用加速 長崎のIT業「ラプラス」 磯焼けの原因・ガンガゼの生息域を把握

長崎新聞 2025/04/29 [12:50] 公開

海中で撮影した映像をAIで解析し、ガンガゼを識別する画面(ラプラス提供)

海中で撮影した映像をAIで解析し、ガンガゼを識別する画面(ラプラス提供)

  • 海中で撮影した映像をAIで解析し、ガンガゼを識別する画面(ラプラス提供)
  • 畜舎内に侵入したネズミを検出する画像解析AI(同社提供)
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IT業の「LAplust(ラプラス)」(長崎市)が、農水産業分野での人工知能(AI)活用を加速させている。独自開発した画像解析AI「LA-Eye」を駆使し、今年1月、五島近海で磯焼けを引き起こしているウニの一種、ガンガゼの生息域を把握することに成功した。野菜の収量予測や家畜の伝染病対策の研究も進めている。

 ラプラスは、2019年に佐世保高専の卒業生3人が起業。代表の田中宏樹さんの実家が雲仙市のイチゴ農家ということもあり、AIを活用した「農業の製造業化」を最終的な目標に掲げる。全国の農家約3万人が利用する農作業管理アプリ「アグリハブ」にも、病害虫による農作物の被害状況を診断できる技術を提供している。

 水産業では近年、磯焼けが問題となっており、漁獲量にも影響が及んでいる。ラプラスは23年10月から五島市などと連携し、五島近海で磯焼けの原因となっているガンガゼの生息域や、海藻の生育状況を把握する研究に着手。海中の映像を「LA-Eye」で解析し、ガンガゼの生息域を示す「ヒートマップ」を作成した。

 これまでは、人が海に潜り分布や生息数を確認していたが、ヒートマップの活用で作業効率は格段に上がるという。漁業の収益改善に向けた「海の見える化」実現を目指し、定置網や養殖いけすの映像解析も進めていく。

 昨年9月には、県農林技術開発センターと研究協定を結び、野生動物が畜舎内に伝染病を持ち込むのを防ぐ研究を開始。撮影した畜舎内の映像をAIで解析し、侵入するイタチやネズミ、ゴキブリを検出できるようにした。今後は、日ごとに一定数の野生動物を検出したらスマホなどに通知し、清掃のタイミングなどを知らせる仕組み作りも進めていく。

 ラプラスの技術は、製造業で不良品の検出などにも使われており、今後も拡大を見込む。同社取締役の原崎芳加さん(32)は「農水産業分野は製造業と比べ、今のところ売り上げの比率としては小さい」としつつ「人が生きていくために農水産業は欠かせない。力を入れて開発を進めていきたい」と意欲を語った。