雲仙の“幻のイチゴ”が好評! 完熟がこだわり「貴婦人の微笑み」…希少価値高め安定出荷を 長崎

長崎新聞 2025/01/31 [11:56] 公開

収穫直前の「貴婦人の微笑み」を手に「大きくて甘く香り豊かで形も美しい」と魅力を語る前田組合長。実はペンの半分ほどの長さまで育っている=雲仙市国見町

収穫直前の「貴婦人の微笑み」を手に「大きくて甘く香り豊かで形も美しい」と魅力を語る前田組合長。実はペンの半分ほどの長さまで育っている=雲仙市国見町

  • 収穫直前の「貴婦人の微笑み」を手に「大きくて甘く香り豊かで形も美しい」と魅力を語る前田組合長。実はペンの半分ほどの長さまで育っている=雲仙市国見町
  • 一般的なイチゴ(左)の2倍ほどの大きさの「貴婦人の微笑み」
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“幻のイチゴ”として評価を高める雲仙ブランドがある。大粒で甘く美しい品種「貴婦人の微笑(ほほえ)み」。手作業がほとんどで生産量が限られ、県内と北九州の市場に出荷するほか、雲仙市のふるさと納税の返礼品としてしか出回らない。生産する同市国見町の国見園芸出荷組合の出荷額は5年前より3割アップしており、県内では現在、1パック約350グラム2千円弱で店頭に並ぶ。同組合の前田哲郎組合長(43)は「雲仙にこんなに大きくてインパクトがあるイチゴがあると知ってほしい」と意気込む。

 前田さんが貴婦人の微笑みと出合ったのは10年ほど前。当時の組合長、父の武彦さん(82)が資材業者から「大粒で甘いよ」と新品種の苗を勧められたのがきっかけだった。

 栽培すると、大粒でつやつやとした香り高いイチゴができた。1粒40~100グラムと、大粒でも50グラムの従来品種「恋みのり」と比べて1・5倍以上の大きさが多い。酸味がなく甘みが口いっぱいに広がり、糖度13~16度。恋みのりは11、12度。「これはいける」と直感した武彦さんと一緒に、近所のイチゴ農家に生産を呼びかけた。

 現在、同市の7軒が計2・5ヘクタールの畑で年間20万パック以上を出荷。4年前に市が雲仙ブランドに認定した。同組合と愛媛県の数軒だけで栽培されている。

 真っ赤で大粒、甘くておいしい-。その感動を知ってほしいと、ほぼ完熟になるまで待って摘み取る。こだわるからこそ日持ちはせず、東京など遠距離の市場からの依頼は断っている。

 果皮がやわらかい上に完熟まで育てると傷付きやすくなるため、栽培や収穫、選別に気を使う。果実の下にネットを敷いて育てて、薄いスポンジの上に並べてパックに詰めないといけない。「貴婦人の名にふさわしいほどデリケート」と前田組合長は苦笑する。

 イチゴ栽培は苗作りから収穫まで1年以上かかる。組合では3年前から、ビニールハウス内の温度や湿度、土壌水分、二酸化炭素(CO2)濃度などの情報を5分おきに自動で観測できるシステムを取り入れた。それでも、気温が氷点下になりそうなときはハウス内でストーブをたいて夜中も見て回るなど、気が抜けないという。

 「苦労して出荷しても、『あまおう』は1パック当たり100円ほど高い卸値が付いた。悔しかった」と武彦さん。「ようやく肩を並べられるものが作れるようになった」とほっとした笑顔を見せる。

 イチゴは寒い方が糖度が増すため、1~2月が最もおいしいとされる。前田組合長は「『甘い』『すごい』と驚いてもらえたらうれしい。希少価値を高めつつ安定的に出荷させたい」と抱負を語った。