懐かしの牛乳瓶

長崎新聞 2025/03/24 [09:45] 公開

牛乳瓶の底のような…といえば、昔は度が強くてレンズが分厚い眼鏡のことを言った。技術の進歩でレンズは薄くなり、今ではその例えを日常会話で使うことはなくなった▲銭湯から上がると腰に手を当てて瓶入り牛乳をぐびぐび飲むのが昔ながらのお決まりの光景…とされる。「牛乳瓶」はどこか昭和の風情をまとう▲明治は、100年ほど前に発売された「明治牛乳」や70年の歴史がある「明治コーヒー」など瓶入り(容量180ミリリットル)の4商品の販売を今月末で終える。需要が落ち、瓶の調達も難しくなったという▲懐かしく思い出すのは、学校給食の瓶入り牛乳という人も多いだろう。遠い遠い記憶だが、瓶のふたをメンコ代わりに級友と遊び、いつの間にか数え切れないほど集めた覚えがある▲“戦利品”を喜んだのも今は昔…と思ったら、古い牛乳瓶のふた1枚がネットで千円単位で売買されることもあるという。コレクターの冷めやらぬ情熱に恐れ入る▲ミュージシャン矢野顕子(あきこ)さんの昔の曲にある。〈自転車でおいでよ/僕の家はすぐそこだよ/牛乳のあきびんがめじるしさ〉(「自転車でおいで」)。牛乳の宅配が当たり前だった昔、たいていの家の玄関先に空き瓶を入れる牛乳箱があった。現代の牛乳瓶はといえば、昔日の記憶に誘う“めじるし”だろう。(徹)