鶴の一声

長崎新聞 2025/02/13 [09:45] 公開

ツルは首が長く、他の鳥に比べて「鳴管」と呼ばれる発声器官が発達しているため、金管楽器のように甲高い声で鳴くそうだが、めったに鳴かないことでも知られているという▲なるほど、だから「鶴の一声」なのか、と改めて納得した。もちろん〈紛糾した議論を決着させるトップのひと言〉をいう言葉だが、動画付きの図鑑もインターネットもなかった時代にこの表現を思いついた先人の自然を観察する眼には驚くばかり▲さて、何かの会議で二つの意見が鋭く対立していて、あちらを立てればこちらが立たない二者択一の場面、それでも何らかの結論を得ようとする時…。企業ならば担当重役や社長の出番だ▲選択的夫婦別姓制度の導入を巡って、自民党の作業チームが半年ぶりに議論を再開した。党員の共感と広く国民の理解を得られるような方向性を見いだしたい…と座長のベテラン議員は述べるが▲「旧姓を変えたくない人の思いに応えるか、応えないか」-話はお手本のような二択で、双方の主張を足して2で割ることはできない。どんなに時間をかけたところで、何かの形で意見が集約されることなど望み薄に思える▲改姓に伴う不都合に悩む人には、時間稼ぎの「議論のための議論」にしか見えまい。政治のツルはいつ、どんな声で鳴くのだろう。(智)