国は外国人の富裕層が個人所有する大型クルーザー「スーパーヨット」の受け入れを推進している。寄港地への高い経済波及効果が期待でき、国内では関東や瀬戸内海、沖縄などの自治体が誘致に力を入れる。長崎県には市街地に近い長崎港をはじめ、多くの港湾があるが、積極的に呼び込む動きは見えず、寄港実績は乏しい。現状を探った。
昨年9月、長崎港の県庁そばにある尾上岸壁に白と黒の優美なスーパーヨット(全長約30メートル)が着岸した。瀬戸内海を巡った台湾のクルー5人が搭乗。荒天を避けるための寄港だったが、船長は市街地までの近さを気に入った様子。「市民はみなさん親切。食べ物もおいしい」と満足そうに語った。
■景勝地を周遊
スーパーヨットは富裕層がプライベートな旅行を楽しむために購入。世界各地の景勝地などを周遊する。一般社団法人「スーパーヨット誘致会議・日本」によると、世界の隻数は2007年に4400隻だったが、18年には9395隻と倍増。22年は1万2千隻程度と推計している。
寄港地には経済的な恩恵がもたらされる。観光や食事、給油などで多額の消費が見込まれ、15年に訪日したヨット(全長約90メートル)は1カ月間の航海で計4500万円を国内で消費したと同法人は算出する。船体を修繕する造船関連の仕事も生まれ、海外では離島の経済活性化にもつながっているという。
■政府も後押し
日本政府も経済波及効果に着目して各地の誘致を後押しする。21年に税関や入国管理手続きなどを大幅に簡素化すると決め、国内周遊のハードルを下げた。23年に閣議決定した観光立国推進基本計画でも「受け入れ環境整備の取り組みを進める」とした。
全国では神戸市がスーパーヨットに特化した国内初のマリーナ(約6・4ヘクタール)を神戸港の一角に建設する計画を打ち出し、27年春の開業を目指している。瀬戸内海のほかの港湾も海外に向けたプロモーションを展開。沖縄県は拠点となる岸壁を整備した。
一方、全国で2番目に港湾が多い本県では誘致の機運は高まっていない。県によると、16年以降、公共岸壁での寄港数は長崎港で8回、五島市の福江港で3回にとどまる。
■県は慎重姿勢
長崎港では出島岸壁の2カ所と尾上岸壁の計3カ所で主に受け入れているが、専用の施設はない。昨年12月の県議会一般質問では川崎祥司議員(公明)が停泊施設の整備を提案したが、県は「既存岸壁で寄港実績を増やしつつ、ニーズの把握や波及効果を確認するなどして必要性を検討する」と慎重な姿勢を示した。
県は行政運営の指針とする総合計画でクルーズ客船の誘致を掲げる一方、スーパーヨットをターゲットにした戦略は特に策定していない。「クルーズ客船は運航会社に対して誘致活動ができるが、スーパーヨットの寄港はオーナーや乗組員の評判、口コミに左右される。呼び込みが難しい面もある」と県港湾課。ハード面の充実だけでなく、PRも課題となっている。
昨年9月、長崎港の県庁そばにある尾上岸壁に白と黒の優美なスーパーヨット(全長約30メートル)が着岸した。瀬戸内海を巡った台湾のクルー5人が搭乗。荒天を避けるための寄港だったが、船長は市街地までの近さを気に入った様子。「市民はみなさん親切。食べ物もおいしい」と満足そうに語った。
■景勝地を周遊
スーパーヨットは富裕層がプライベートな旅行を楽しむために購入。世界各地の景勝地などを周遊する。一般社団法人「スーパーヨット誘致会議・日本」によると、世界の隻数は2007年に4400隻だったが、18年には9395隻と倍増。22年は1万2千隻程度と推計している。
寄港地には経済的な恩恵がもたらされる。観光や食事、給油などで多額の消費が見込まれ、15年に訪日したヨット(全長約90メートル)は1カ月間の航海で計4500万円を国内で消費したと同法人は算出する。船体を修繕する造船関連の仕事も生まれ、海外では離島の経済活性化にもつながっているという。
■政府も後押し
日本政府も経済波及効果に着目して各地の誘致を後押しする。21年に税関や入国管理手続きなどを大幅に簡素化すると決め、国内周遊のハードルを下げた。23年に閣議決定した観光立国推進基本計画でも「受け入れ環境整備の取り組みを進める」とした。
全国では神戸市がスーパーヨットに特化した国内初のマリーナ(約6・4ヘクタール)を神戸港の一角に建設する計画を打ち出し、27年春の開業を目指している。瀬戸内海のほかの港湾も海外に向けたプロモーションを展開。沖縄県は拠点となる岸壁を整備した。
一方、全国で2番目に港湾が多い本県では誘致の機運は高まっていない。県によると、16年以降、公共岸壁での寄港数は長崎港で8回、五島市の福江港で3回にとどまる。
■県は慎重姿勢
長崎港では出島岸壁の2カ所と尾上岸壁の計3カ所で主に受け入れているが、専用の施設はない。昨年12月の県議会一般質問では川崎祥司議員(公明)が停泊施設の整備を提案したが、県は「既存岸壁で寄港実績を増やしつつ、ニーズの把握や波及効果を確認するなどして必要性を検討する」と慎重な姿勢を示した。
県は行政運営の指針とする総合計画でクルーズ客船の誘致を掲げる一方、スーパーヨットをターゲットにした戦略は特に策定していない。「クルーズ客船は運航会社に対して誘致活動ができるが、スーパーヨットの寄港はオーナーや乗組員の評判、口コミに左右される。呼び込みが難しい面もある」と県港湾課。ハード面の充実だけでなく、PRも課題となっている。