諫早湾干拓農地 2社に明け渡し命令 長崎地裁判決 「権利乱用」認めず

2022/09/06 [11:40] 公開

支援者らを前に「考えられない判決」と話す松尾社長(右)と勝田社長=長崎市、長崎地裁前

 国営諫早湾干拓事業の干拓地に入植した営農2社を相手に、長崎県農業振興公社が農地明け渡しなどを求めた訴訟で、長崎地裁(天川博義裁判長)は5日、明け渡しを命じる判決を言い渡した。2社は農地利用権(賃借権)の再設定を賃貸人の公社が拒んだのは一方的だとして争ったが、判決は「明け渡し請求が権利乱用、信義則違反に該当するとは認められない」と退けた。
 営農者側は控訴する意向。判決は、明け渡しに仮執行宣言は付けなかった。
 2社は2008年に入植したマツオファーム(島原市)とグリーンファーム(諫早市)。公社は13年、利用権を18年3月末まで再設定したが、同年4月以降については必要文書を提出しなかったことなどを理由に拒否した。裁判で2社は、公社がカモ食害への有効な対策を取らず、賃貸人としての義務不履行を棚に上げて明け渡しを主張するのは権利乱用だ、などとして請求棄却を求めていた。
 判決はマツオファームについて、「(公社が)同意書の不提出を理由に、審査委員会による実質的審査を経ることなく再設定を認めなかったのは不適切な対応」と指摘。しかし、「賃借料相当額の不払いを継続している現状では、占有継続による原告の利益の侵害の度合いが大きい」とした。グリーンファームについても、明け渡し請求は権利乱用に該当しない、と結論付けた。
 公社が求めていた賃料相当損害金(マツオファームは明け渡し期限から明け渡し完了まで年約544万円の割合、グリーンファームは同約256万円の割合)や、地元土地改良区への賦課金相当額の支払い請求なども認めた。
 2社は公社や国などを相手に、野鳥による食害対策を怠ったとして、損害賠償や潮受け堤防排水門の開門を求めた裁判を起こしており、同地裁で審理が続いている。