茂木ビワのルーツは“中国” ゲノム解析で歴史記述裏付け 佐賀大など

2022/06/28 [11:00] 公開

現在栽培されている「なつたより」

 長崎の特産品、茂木ビワをはじめ、日本のビワの栽培品種は中国ビワから派生したことが、佐賀大を中心とする研究グループのゲノム(全遺伝情報)解析によって明らかになった。江戸末期に中国から持ち込まれたビワの種子が現在の茂木ビワになった-とする歴史記述が、科学的に裏付けられた。
 福田伸二・同大農学部付属アグリ創生教育研究センター准教授や稗圃直史(ひえはたなおふみ)・本県農林技術開発センタービワ・落葉果樹研究室長らのグループが、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに論文を発表。世界各地の95種類のビワについて、ゲノム配列を比較した結果、大きく3分類できることを解明した。
 日本のビワ栽培は、長崎の唐通事からビワの種子をもらい受けた三浦シヲという女性が、茂木村(現在の長崎市茂木地区)の庭先にまいたことで始まったといわれる。この品種「茂木」や、その後誕生した「田中」など、交雑や枝変わりで生まれた日本の24品種は全て、中国で栽培されている21品種と同じグループに入った。
 また、福井、大分など日本各地に自生しているビワの系統は、日本や中国の栽培品種とは異なるグループに属していることが分かった。もともと日本に自生していたか、大昔に日本にもたらされた可能性が考えられるという。
 それ以外の米国、イスラエル、ギリシャ、ベトナムなどに生えているビワは、独立した一つのグループにまとまった。「中国からヨーロッパに広まった」「日本から米国に導入された」という歴史的記録とは異なる結果が出た。
 福田准教授は「鎖国時代に中国から長崎へ伝来したビワから、現在の主力品種『茂木』『田中』や、長崎県発の優良品種『なつたより』が誕生したことが、科学的に明らかになった。また、日本の自生ビワは、奈良、平安時代の書物に記されたビワの子孫である可能性がある。将来的には、日本の自生ビワが育種に活用され、日本独自の品種が誕生することも期待できる」と話している。