「波佐見テラゾ」 陶磁器端材を建材に再生 廃材問題解決の糸口探る

2022/05/27 [12:40] 公開

県窯業技術センターの職員(両端)と波佐見テラゾに使う陶磁器片を選ぶ(右から2人目から)裏邊彩子さん、恵さん、本村さん=波佐見町湯無田郷、ウラベ

 波佐見焼の規格外品や、製造工程で出る廃棄物を新たな素材への再生を進めている生産者とデザイナーのチーム「Utte(ウッテ)」。陶磁器の端材を利用した建材「波佐見テラゾ」を製品化した。長崎市の高級チョコレートショップのショーケースに採用されるなど、今後の展開が注目されている。Utteのメンバーは「大量生産で生まれる廃材。ものを作る者として問題解決の糸口を探している。現状を考えるきっかけになれば」と話す。
 Utteは波佐見焼の焼成前の成形を手掛ける生地屋「ウラベ」(波佐見町湯無田郷)の双子の姉妹、裏邉彩子さん、恵さん(34)とオランダ在住のインテリアデザイナー、本村らん子さん(35)の3人。「廃材を砕き『打って代わる』ことで、未来を創造するとの思いを込めた“ロックな活動”」。彩子さんはUtteに込めた思いを語る。
 テラゾとは、大理石や御影石などの自然石を砕いた粒をセメントなどで固め、表面を磨き上げた建材。人造大理石ともいう。床材や天板として使われ、かつては学校の手洗い場や公園のコンクリート製の滑り台にも使われた。

「ゴディバ」アミュプラザ長崎店のショーケースに採用された「波佐見テラゾ」(下方から2段分、スペース提供)

 自然石の代わりに陶磁器片を活用した波佐見テラゾは、陶磁器片の色や大きさを変えることで色合いの仕上がりに変化を持たせるのが特長。同町の県窯業技術センターも研究に協力した。
 Utte発足のきっかけは昨年5月、本村さんが姉妹に出した1通のメール。陶磁器の製造過程では傷や汚れがついた規格外品や焼き物の成形に欠かせない石膏型の廃棄が課題。「処分場に埋めるのではなく、使える何かに変えられたら」-。こんな生産者の思いを恵さんが代弁したウェブ記事に共感し、テラゾへの活用を提案したのが本村さんだった。新型コロナ禍の影響もあり、オンラインで意見交換を重ねながら波佐見テラゾを完成させた。

規格外品の端材をテラゾの原料にするために粉砕機にかけるUtteのメンバー=波佐見町稗木場郷、県窯業技術センター

 波佐見テラゾは昨年10月に東京、12月に大阪のイベントに出品すると、アート作品や建材として引き合いがあった。さらに、地元長崎からもうれしい注文が届いた。ベルギーのチョコレートブランド「ゴディバ」のアミュプラザ長崎店(長崎市尾上町)が26日のリニューアルに合わせ、商品を展示するショーケースに採用。設計・施工のスペース(東京)の担当者は「地域資源の活用とSDGs(持続可能な開発目標)推進を両立した建材」と評価する。
 彩子さんはUtteの今後をこう語る。「ラボ(研究所)としてテラゾ以外のツールも使い、現状を伝えていきたい」。テラゾを起点に廃材というネガティブなものをポジティブに変える可能性を追求していく。