粋な計らい

長崎新聞 2022/04/11 [11:07] 公開

 人が喜びそうなことをさりげなくする、寛大で人情味のある処置を執る、ということを意味する「粋な計らい」。先日、ラグビーのリーグワンに所属する埼玉パナソニックの取った行動は、まさにそれだった▲先月末、全国高校選抜ラグビー大会の決勝前夜。勝ち上がっていた東福岡が大会実行委から辞退勧告を受けた。理由は5日前の対戦相手からコロナ陽性者が確認されたため。結果、報徳学園(兵庫)の不戦勝での優勝が決まった▲だが、事態はここで終わらなかった。会場近くに練習場がある埼玉が動いた。東福岡の選手にPCR検査をした上で、落胆する両校のために練習場を提供。決勝開始時間に合わせて“練習試合”を実現させ、ユーチューブでライブ配信までした▲その時のコメントがにくい。「たまたま練習が休みでグラウンドが空いていたから」。もちろん「感染拡大したら誰が責任を取るのか」という反論もあったが、ネットの反応は圧倒的に埼玉への称賛だった▲コロナ禍の春は3年目になった。この手の開催か否かの論争はまだ続きそうで、結論を導き出すのは難しい▲でも、もう3年目でもある。主催者は延期などの代替案の準備や素早い対処をできたのではなかろうか。今回の埼玉の行動は、その道筋を示したような気がしている。(城)