「信じる者」と書いて

長崎新聞 2022/04/02 [11:00] 公開

 「儲(もう)かる・儲ける」の「儲」の字は「にんべん」と「諸」でできている。「諸」は、いろいろな準備やたくわえのことを意味しているそうだ▲だから、「信」+「者」で「儲かる」…は、よくできた俗説ということになるのだが、「商売は信用が第一」とか「信じた道を・信念を持って進むことが利益や発展につながる」-の言葉にはそれなりに説得力がある▲問題なのは「信じる者」「信じやすい者」を「儲け話のタネ」と考える不届き者が後を絶たないことだ。次から次に“新手”を登場させ続ける悪質商法やニセ電話詐欺、文字で書くのもいまいましい▲「成人」となる年齢が昨日、18歳に引き下げられた。高校を卒業して働き始めたり、進学で親元を離れて1人暮らしを始めたりするケースは多い。そうした社会の実態にルールがようやく追いついた、と言えなくもないのに▲「未成年者取り消し権」に守られてきた18歳と19歳が、不当で危険な契約の標的になりはしないか、と懸念が広がっている。さまざまな経験の乏しい彼ら彼女らもまた「信じやすい者たち」だ▲大人の仲間入り-祝福の言葉は後回しで、自覚や責任を説くでもなく、真っ先に「警戒心」を言わねばならないとしたら、その社会には大切な何かが足りない。改めて考えずにいられない。(智)