高校体育祭の春開催が増加 熱中症や進路対策など利点 長崎県内公立の半数

長崎新聞 2025/05/05 [11:20] 公開

リレーを走る仲間に声援を送る生徒。日陰は肌寒く、ジャージーを着ている生徒もいた=長崎市、長崎東中・高

リレーを走る仲間に声援を送る生徒。日陰は肌寒く、ジャージーを着ている生徒もいた=長崎市、長崎東中・高

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長崎県内の公立高で、体育祭を春に開催する学校が増えている。秋に実施されることが多かったが、県教委によると本年度は全日制55校のうち、4月実施が10校、5月が17校と全体の半数近い計27校に上った。各校への取材によると、うち12校は昨年度までの7~10月開催を本年度から変更。10校は昨年度か一昨年度に秋から春に変えていた。熱中症対策を一番の理由に挙げる学校が多かった。

 他の全日制の本年度の体育祭は7月に2校、9月に12校、10月に14校でそれぞれ予定されている。

 春開催に変えた学校はいずれも、生徒や観覧する保護者らの安全面の配慮が理由と説明。これに加え、早めに大きな行事を終えて3年生が進学や就職に備える時間を確保するためとした学校があった。受験を考えると遅い時期にずらすことは難しいとの声や、秋の台風への懸念も聞かれた。

 昨年まで9月に開いていた県立長崎東高(長崎市)は本年度、公立高で最も早い4月24日に中高合同の体育祭を開いた。開会式があった午前9時ごろの気温は16度ほど。体操服の上にジャージーを着た生徒も目立った。暑さによる体調不良者は出ず、無事に終了した。

 県立長崎南高(同)は昨年度から5月開催に。2023年9月に開いた際は生徒や保護者から暑さによる体調不良者が出たが、昨年はなかった。春は高総体前とも重なり多忙な時期だが、受験のことも考え5月に調整したという。

 県立西陵高(諫早市)は昨年度、初めて4月下旬に開催。夏休みに受験勉強や総合型選抜(旧AO入試)などの準備に専念できたという声があった。新年度が始まってすぐの行事で、先輩・後輩や同級生同士が打ち解けるのに役立つ利点もあったとした。

 一方、秋の開催のまま暑さ対策の工夫をする学校も。県立長崎北高(長崎市)は昨年度、9月の体育祭を初めて夕方に開催。時間を短縮し、競技種目は生徒が主体になり決めた。同市のベネックス総合運動公園かきどまり陸上競技場で開き、準備の負担軽減にもつながったという。体調不良者は出なかった。

 気象庁のホームページによると、昨年は長崎の9月の平均気温が28・6度、最高気温の平均は32・9度だった。一方、5月上旬は平均気温18・6度、最高気温の平均は23・0度だった。

◎今年から変更 涼しい中で白熱 長崎東中・高
 4月24日に開かれた県立長崎東中・高(長崎市立山5丁目)の体育祭は初めての春開催に伴い、準備や練習期間は新学期が始まってからの約2週間に。急ピッチだったが生徒が力を合わせてつくり上げ、当日は笑顔と歓声が広がった。田川耕太郎校長は「早過ぎるという懸念はあったが生徒の欠席も少なく、新年度のスタートとしても良かったのでは」と話した。

 昼ごろには日差しが強くなったが風は涼しく、気温は21度ほど。生徒は集団演技などで会場を盛り上げ、白熱した短距離走やリレーでは、声をからして声援を送っていた。

 開会式で「私たちの胸は真夏のように燃え上がっている」とあいさつした長崎東高生徒会長の中山友貴さん(17)は「短い時間の中、みんながそれぞれ自分を生かせる場所を探し、力を発揮しようとやってきた」と振り返った。

 3年の女子生徒の一人は、のぼりや衣装の制作に追われ「短くて大変だった」としながらも「振り返ればそれも青春だったかも。最初は(クラスメートの)距離があったけど、みんなで頑張った」と笑顔を見せた。昨年まで小型扇風機を手に応援したが、今年は出番がなかった。