接続制限も子どもが「裏技」…学校配備の端末、いたちごっこの状況続く「指導だけでは限界」 長崎

長崎新聞 2025/03/03 [12:00] 公開

持ち帰りが推奨されている学習用端末。便利なツールとして活用の幅が広がる一方、リスクも見えてきた(写真はイメージ)

持ち帰りが推奨されている学習用端末。便利なツールとして活用の幅が広がる一方、リスクも見えてきた(写真はイメージ)

大きい写真を見る
全ての小中学生に学習用デジタル端末を配布した国の「GIGAスクール構想」。長崎県では県立高校生にも配備され、授業で積極的に使われている。現在は持ち帰りも推奨され、活用の幅が広がる一方、2021年度の本格始動から4年がたち、家庭における使用リスクも見えてきた。

 県内のある男子生徒は、端末配備を機に自宅での使用が増えた。保護者によると、次第に食事の時間に自室から出てこなくなるなど生活に支障が出てきたという。保護者がふと目にした画面に映っていたのは、動画投稿サイトユーチューブのゲームなどの動画。学校側が設定しているサイトへの接続を制限する「フィルタリング」で見られないはずなのに、なぜ-。息子に尋ねると、友人に教えてもらったという「裏技」を使って見ていた。

◆「すり抜け」防ぐすべは
 フィルタリングの“すり抜け”問題は、この家庭だけの話ではないようだ。

 長崎市教委教育研究所によると、同市の公立小中学校は、ユーチューブについて、午後5時から翌朝までフィルタリングで制限。しかし、児童生徒が裏技ですり抜け、使用しているという報告が学校側からたびたび挙がっているという。

 市教委はその都度対応しているが、対策を講じれば新たな裏技が現れ「いたちごっこの状況」(市教委担当者)。2月の3連休はフィルタリングではなく、集中管理システムでユーチューブを使用できなくする措置を取った。ただ、ユーチューブは授業でも調べ学習の際などに使われ、ルールを守って利用すれば便利なツールだと指摘。より効果的に「すり抜け」を防ぐすべがないか検証を始めている。

◆指導に苦慮する場面も
 GIGAスクール構想を巡っては、文部科学省は当初、23年度までに配備する計画だったが、新型コロナウイルスの影響で休校が長期化したことなどを受け、大幅に前倒しした経過がある。「(端末利用で)学びを止めない、一人一人の可能性を伸ばす。そんな趣旨で始まった。制限が増えることで学びの幅が狭まってしまわないか」。県教委義務教育課の担当者は、そう不安を口にした。

 制限を増やし過ぎないためにも「ルールを破った使い方は『不正利用』だと伝えていくしかない。大人になった時、会社のパソコンで同じことをしたらどうなるのか考えてほしい。情報モラルの教育も重要だ」としている。

 1人1台端末という保護者や教職員が体験したことのない学びの形にどう向き合っていくべきか。同市の中学教諭の一人は「学習ツールとしてはとても便利だが、使い方によってはトラブルの源になる。端末を扱うスキルが高い生徒も多く、指導に苦慮する場面も少なくない」と明かし、「学校だけの指導では限界があり、家庭の力が必要だ」と話した。