西彼杵高バレー部・佐藤姉妹 地域の支えに感謝、「結果で恩返し」思い強く…春から2人で東京進学

長崎新聞 2025/02/26 [12:15] 公開

西彼杵高に転校して「人の温かさを感じた」とほほ笑む佐藤佳音(右)、侑音=西海市、西彼杵高

西彼杵高に転校して「人の温かさを感じた」とほほ笑む佐藤佳音(右)、侑音=西海市、西彼杵高

  • 西彼杵高に転校して「人の温かさを感じた」とほほ笑む佐藤佳音(右)、侑音=西海市、西彼杵高
  • 得点源としてチームをけん引した佐藤佳音(右)と侑音=東京体育館
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角力灘を望む小高い丘にある長崎県立西彼杵高。教室の窓から眺める景色は壮大な海が広がる。春のそよ風が吹く2023年4月。2年生に進級した佐藤佳音、侑音の双子の姉妹は、九州文化学園高バレーボール部の仲間とともに転校してきた。

 九文を15度の日本一に導いた井上博明監督が定年退職後に西彼杵高の監督に就任。2人は「高校生になって転校するとは思わなかったけど、迷いはなかった」。指導継続を求めてついていった。もちろん不安も大きかったが、すぐになじめた。バレーができる喜びを感じながら、名将の下で練習に打ち込んだ。

 2人は常に「恩返し」という言葉を口にする。練習する体育館には、頻繁に地域住民が訪れ、寮には米や肉、野菜、魚などの差し入れもあった。歩いていると、軽トラックが急に止まって「バレー部を応援しているよ。頑張って」と声をかけられたりもした。県外の試合にも多くの人が駆けつけてくれた。「すごく応援されている。結果で恩返ししないと」。2人は新しい「地元」のために思いを強くした。

 「西彼杵」の看板を背負って初の全国となった昨夏の北部九州インターハイ。佳音、侑音はチームの得点源として、全国8強入りに貢献した。あくまでも日本一に照準を合わせていたので、結果に満足はできなかったが「全国でもやれる」という自信はついた。

 その後は西彼杵単独チームで臨んだ10月の佐賀国スポで8強入り。11月の全日本高校選手権(春高)県予選も順当に勝ち抜いて全国切符を手にした。「今度こそ頂点へ」。気持ちは高ぶった。

 だが、思いの強さが空回りしたのか。秋田令和との1回戦。第1セットを圧勝しながら、第2、3セットを取られて逆転負けした。「エースとして勝たせられなかった」(侑音)。まさかの初戦敗退を喫した。

 ここで心を和らげてくれたのは、東京の会場まで応援に来てくれた「地元」の人たちだった。「全国に連れてきてくれてありがとう」「元気を分けてもらったよ」

 「いっぱい後押ししてくれて、お礼を言わないといけないのは私たちなのに…」。2人の涙は止まらなかった。

 互いを刺激し合って成長してきた2人。春からは東京で一緒に暮らして、佳音は日大、侑音は青学大と別々の大学に通う。「自然に囲まれた西彼杵や仲間と離れるのが寂しい」(佳音)、「ここで人の温かさを感じることができた」(侑音)。かけがえのない時間を過ごした地への感謝を胸に、2人は地元の高校を巣立つ。

 【略歴】さとう・かおん、ゆおん 東彼波佐見町出身。波佐見東小1年からバレーボールを始め、波佐見中3年時にそろって県選抜入り。九州文化学園高に進学して、2年進級時に西彼杵高に転校した。3年時に北部九州インターハイ、佐賀国スポで8強入り。容姿が似ているために「間違えられて、しかられたこともしばしば」。身長は姉の佳音が171センチ、侑音は173センチ。