ゴルフ外交の終わり

2020/11/13 [09:50] 公開

 1957年、訪米した岸信介首相を、アイゼンハワー大統領はゴルフに連れ出した。プレーの後に語ったという。「大統領の職にあれば嫌な者ともテーブルを囲むが、ゴルフは好きな相手としかできない」▲ゴルフは友情と信頼の証し-という考えは今に受け継がれている。岸氏の孫、安倍晋三前首相もトランプ米大統領と何度かプレーしてきた▲昨年、国賓としてトランプ氏を招いた時も、安倍氏はゴルフ接待に余念がなかった。この「和気あいあい」がぷつりと途切れるのを、誰が予想できただろう▲安倍氏は病気で突然、首相を退き、トランプ氏は大統領選での負けが確実になった。もしも…と言っても詮ないが、もし2人とも続投ならば、安倍氏は今頃、盛大な拍手を送っていたに違いない▲菅義偉首相が、「次期大統領」を確実にしたバイデン前副大統領と電話会談した。日米同盟の強化を確かめ合ったという。ゴルフ外交の親密ぶりに比べたら、やや硬い会話だったろう。しなやかな外交を進められるかどうか▲アイゼンハワー氏は大統領を退いた後、「ゴルフで私に勝つ人が増えたね」とユーモアを交じえて語ったらしい。やおら手加減がなくなったな…と、さみしさを覚えたかもしれない。友情と信頼の証しに“有効期限”があり、ゴルフ外交もいつか終わる。(徹)