長崎空港のロビーから旅客の姿が消え、職員がぽつんといた-と長崎空港ビルディング(大村市)の社員は振り返る。2020(令和2)年、新型コロナウイルス禍が襲った。
同年度の乗降客数は88万9千人。歴代1位だった18(平成30)年度の約4分の1まで落ち込んだ。国際線は定期便が運休し、旅客数はプライベートチャーターを利用した3人のみだった。
その後は少しずつ回復。昨年度の乗降客数は速報値で300万人台に戻る伸びを見せている。昨年10月にはソウル線が大韓航空の運航で再開。現在、国内9路線、国際3路線(うち香港線運休)が就航している。
ただ、本県へのインバウンド(訪日客)はコロナ禍前の水準に戻っていない。24年の外国人延べ宿泊者数は60万1千人で、コロナ禍前の7~8割にとどまる。
「長崎は近隣県から取り残されている」。県インバウンド推進課の課長、小宮健志は指摘する。長崎の国際直行便は近隣県に比べ少ない。宿泊者数の回復率も全国に後れを取る格好だ。
ただ、新規路線の就航に向けては「鶏が先か、卵が先か」の議論が生じるという。県は課題の一つに手荷物検査レーンの少なさなど国際線ターミナルの施設整備を挙げたが、整備のためには収益を確保する就航の見込みも求められる。
同様のことは、県などが目指す空港の24時間化にも言えそうだ。運用時間(午前7時~午後10時)が延びれば東南アジアなど新たな国際線の誘致につながる可能性はある。ただ、実現には定期便の見込みが確保されていることなどのハードルが横たわっている。
国際線の安定運航のためには、インバウンドだけでなくアウトバウンド(日本人の海外旅行)が不可欠。県はパスポートの取得支援など国際便の利用を促し、上海・ソウル線の維持を図りつつ、観光消費額が高い香港・台湾線の運航を目指すとしている。
開港時、「西の国際空港」を志向した当時の知事、久保勘一。1976(昭和51)年の講演で、長崎は中国ではよく知られているとして、歴史的にも大陸に近い長崎のポテンシャルの高さをうたった。それから半世紀。バブル景気と平成不況が過ぎ去り、コロナ禍はいまだ尾を引く。
空港から大村湾を挟んで対岸の道路沿いに、久保の銅像がある。自ら説得して住民を立ち退かせた箕島の行方を見定めるように、静かにたたずんでいる。
=文中敬称略=
同年度の乗降客数は88万9千人。歴代1位だった18(平成30)年度の約4分の1まで落ち込んだ。国際線は定期便が運休し、旅客数はプライベートチャーターを利用した3人のみだった。
その後は少しずつ回復。昨年度の乗降客数は速報値で300万人台に戻る伸びを見せている。昨年10月にはソウル線が大韓航空の運航で再開。現在、国内9路線、国際3路線(うち香港線運休)が就航している。
ただ、本県へのインバウンド(訪日客)はコロナ禍前の水準に戻っていない。24年の外国人延べ宿泊者数は60万1千人で、コロナ禍前の7~8割にとどまる。
「長崎は近隣県から取り残されている」。県インバウンド推進課の課長、小宮健志は指摘する。長崎の国際直行便は近隣県に比べ少ない。宿泊者数の回復率も全国に後れを取る格好だ。
ただ、新規路線の就航に向けては「鶏が先か、卵が先か」の議論が生じるという。県は課題の一つに手荷物検査レーンの少なさなど国際線ターミナルの施設整備を挙げたが、整備のためには収益を確保する就航の見込みも求められる。
同様のことは、県などが目指す空港の24時間化にも言えそうだ。運用時間(午前7時~午後10時)が延びれば東南アジアなど新たな国際線の誘致につながる可能性はある。ただ、実現には定期便の見込みが確保されていることなどのハードルが横たわっている。
国際線の安定運航のためには、インバウンドだけでなくアウトバウンド(日本人の海外旅行)が不可欠。県はパスポートの取得支援など国際便の利用を促し、上海・ソウル線の維持を図りつつ、観光消費額が高い香港・台湾線の運航を目指すとしている。
開港時、「西の国際空港」を志向した当時の知事、久保勘一。1976(昭和51)年の講演で、長崎は中国ではよく知られているとして、歴史的にも大陸に近い長崎のポテンシャルの高さをうたった。それから半世紀。バブル景気と平成不況が過ぎ去り、コロナ禍はいまだ尾を引く。
空港から大村湾を挟んで対岸の道路沿いに、久保の銅像がある。自ら説得して住民を立ち退かせた箕島の行方を見定めるように、静かにたたずんでいる。
=文中敬称略=