佐世保市が、船越町にある九十九島動植物園(森きらら)を、俵ケ浦半島に整備予定の観光公園へ移設する方向で検討していることが5日、市関係者への取材で分かった。本年度の一般会計補正予算案に調査関連費を計上し、実現の可能性を探る。
市はクルーズ客などの九十九島周遊を促すため、俵ケ浦半島にある県障害者支援施設「つくも苑」跡地に観光公園を整備。2018年度に造成工事を始め、20年度中の供用開始を目指している。公園整備に合わせて、動植物園の併設ができるか調査を進める。
森きららは、1961年に市直営の市亜熱帯動植物園として開園。本県初の本格的な動植物園として人気を集めた。2015年度からは指定管理者制度で、市の第三セクター「させぼパール・シー」が運営している。18年度は約19万2千人が入場した。
一方、施設の老朽化や動物の高齢化は進んでいる。市は08年3月に動植物園の活性化計画を策定して施設の再整備を進めたが、入園者数は低迷。当面は大規模な施設更新はせず、ソフト面の充実を優先する方針を打ち出し、活性化計画も終了していた。
■俵ケ浦半島の振興と連動 観光公園を公設民営で整備へ
佐世保市の朝長則男市長は、地方創生の重要施策「リーディングプロジェクト」の一つに、過疎化が進む俵ケ浦半島の開発を掲げ、県障害者支援施設「つくも苑」跡地に観光公園を整備する。市が検討している観光公園への九十九島動植物園(森きらら)の移設は、老朽化した建物の更新と半島振興を同時に図る狙いとみられる。
市はつくも苑跡地(約13ヘクタール)を県から無償で借り受け、観光公園を公設民営で整備する。佐世保港から九十九島までを眺望できる丘陵状の展望広場やレストラン、農園、ホテルのような快適な環境でアウトドアを楽しむグランピング施設などの設置を想定。運営は指定管理者制度などの手法を検討しており、今後決める。総事業費は約12億7200万円と概算している。
2020年4月には、佐世保港浦頭地区に16万トン級の客船が接岸できる国際クルーズ拠点の供用が始まる予定。観光公園は国内観光客のほか、海外のクルーズ客をターゲットに、九十九島の周遊を促す目的がある。
プロジェクトでは、地元住民が主体となった地域づくりも支援。17年度には活動組織「チーム俵」が発足し、自然を満喫できるトレイルコースの設置など観光資源を生かしたまちづくりに取り組んでいる。
一方で、半島にある展海峰展望台には、すでにクルーズ客を乗せた大型観光バスが多く訪れており、周辺では交通渋滞が発生している。観光公園は展海峰の先にあり、動植物園が移設されれば、交通量がさらに増えて渋滞が多発する恐れもある。市議会では以前から対策を求める声が上がっており、市は県と連携し、道路整備などに力を入れる必要がある。