養殖マグロで島おこし 定番メニュー、ブランド化を

2019/02/28 [00:00] 公開

 長崎県新上五島町内の飲食店や宿泊業者らが、町内産の養殖マグロを地元振興につなげようとプロジェクトチームを立ち上げた。「マグロで島おこし計画」と銘打ち、店舗共通の定番メニューを考案して新たな島の名物にしたい考えだ。「地域団体商標」の登録も視野に入れ、「上五島マグロ」のブランド化を目指す。
 
 ▼観光客増加
 昨年7月、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録された。構成資産「頭ケ島の集落」がある新上五島町にも登録効果の追い風が吹き、観光客が増えている。
 新上五島町浦桑郷でスーパー「カミティ」を経営する中村興産代表、中村繁男さんは昨年5月、マグロ産地の青森県大間町を訪ね、生マグロを使用した丼のおいしさに感動した。
 新上五島町は新鮮な魚を提供できる産地でありながら、昼食時にマグロをはじめとする鮮魚料理を出す店が少ない現状がある。中村さんは「生マグロのおいしさを観光客に味わってほしい。マグロを目当てに来島する人が増えれば」と考えた。
 
 ▼仕組み構築
 中村さんは大間視察の直後、町内の養殖業者から生のマグロ丸ごと一本をカミティが仕入れ、プロジェクトチームに加盟する飲食店や宿泊業者らに、必要な量を切り売りする仕組みを構築した。
 現在、チームには町内のレストランやホテルなど7事業者が加盟。今後、マグロ料理が食べられる飲食店のマップやチラシを製作し、タクシー会社と提携するなどして、観光客に周知を図っていく計画だ。
 有川郷のホテル・マリンピアは昨年、上五島産マグロを試験的にコース料理に取り入れた。ただ、価格は1キロ当たり約3千円と高値。田中太之支配人は「定番メニュー化するためには購入しやすい値段になってほしい」と課題を挙げる。
 
 ▼業者も期待
 新上五島町では現在、6業者がクロマグロを養殖。2016年の生産量は約200トンで、出荷額は約5億9300万円。12年と比較すると生産量、出荷額ともに倍増している。
 チームは「長崎カステラ」のように、地域の名産品に独占的な名称を使用できる「地域団体商標」に上五島産マグロを登録し、ブランド化することも視野に入れている。中村さんは「商標登録すれば全国にアピールできる。ブランド化で売り上げが伸びれば、養殖業者の新規雇用も増え、定住促進にもつながる」と言う。
 桐古里郷で約8年前からマグロ養殖を手掛けている松本文吉さん(65)は「今は採算ラインを何とか維持できている状況。ブランド化が実現すれば魚価も上がるだろうし、販路拡大にもつながる」と期待を寄せている。

上五島産養殖マグロのブランド化について説明する中村代表(写真右奥)=新上五島町浦桑郷、カミティ
新上五島町内で養殖されたマグロ(カミティ提供)