長崎市に人工知能(AI)技術の研究開発拠点をつくる富士フイルムの依田章執行役員、富士フイルムソフトウエアの豊福貴司社長は19日、長崎新聞のインタビューに応じた。
-長崎進出の決め手は。
依田 2012年の山梨県中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故以降、社会インフラの維持管理に注目が集まり、弊社が医療分野で長年培ってきたAI技術なら問題解決に貢献できると検討を始めた。その後、事故以前から長崎大がインフラの長寿命化を研究し、長崎県が最も精度の高いデータやノウハウがある先進地だと分かった。古森(富士フイルムHD会長)の出身地という縁もある。県が現場での実証実験や人材の育成・採用に協力してくれるのは大きい。
豊福 人材確保は首都圏で難しく、福岡より長崎の方がスムーズにできると考えた。エックス線写真を素人が見ても病気かどうか分からない。同様にインフラ点検も画像から問題を読み取る知見が求められる。長崎にはそれがある。
-富士フイルムのインフラ画像診断技術の特長は。
依田 クラウドサービスとしては業界初。虫歯と似ていて、コンクリートの劣化も早期に細かい亀裂を検出できるかが問われる。0.1ミリのひびを汚れやクモの巣と選別しなければならない。肺の血管と気管支を識別する世界最先端の医療技術が生かせる。
-AIで具体的に何ができるようになるのか。
依田 ひび割れから「この橋はどれだけ持つか」「補修がどの程度必要か」などを推定する。これを基に自治体は正確な補修計画をつくれる。現状は点検員の人数が足りず、目視の技術にもばらつきがある。橋から離れた場所で撮影しAIに判断を任せれば効率も精度も向上する。来年度にはレベルアップしたサービスを公表したい。
-どんな人材を求めているか。
豊福 知識は後から学べる。それより世の中にないものをクリエイトする気概が大事。長崎大には医学部の優秀な人材がおり、(20年度開設を目指す)情報系新学部にも期待している。U・Iターンでもいいので長崎で根を下ろし働く人を採用したい。そうでないと事業が長続きしない。
-どんな地場企業と連携できるか。
豊福 既に数社と協議を始めたが、ポテンシャルを十分感じる。AI分野は裾野が広い。半分以上の作業はソフトウエアの実装(新たな機能を組み込むこと)なので、地元IT企業にも優秀な若者を採用していただき、一緒に事業を広げていきたい。