「異常な状態」 長崎・高島でサンゴが大規模白化…地球温暖化、海水温上昇要因か

長崎新聞 2024/10/04 [12:15] 公開

完全に白化したサンゴ(左)と一部白化したサンゴ=長崎市、高島海水浴場(9月21日撮影、やったろうde高島提供)

完全に白化したサンゴ(左)と一部白化したサンゴ=長崎市、高島海水浴場(9月21日撮影、やったろうde高島提供)

  • 完全に白化したサンゴ(左)と一部白化したサンゴ=長崎市、高島海水浴場(9月21日撮影、やったろうde高島提供)
  • 白化していないサンゴ(2023年9月撮影、深見教授提供)
  • サンゴ生育棚のサンゴも白化していた(9月21日撮影、やったろうde高島提供)
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多くの種類のサンゴが観察できる場所として知られる長崎市高島町の高島海水浴場内で今夏、サンゴの死滅につながる大規模な「白化現象」が確認された。地球温暖化や記録的猛暑による海水温の上昇が要因とみられ、保全活動に取り組む団体の関係者は「貴重なサンゴが見られなくなるかもしれない。みんなが環境問題について考えてほしい」と警鐘を鳴らす。9月21日、シュノーケリング体験などを通して海の現状について学ぶ「海の環境講習」が同町であり、記者も参加。白色になったサンゴを目の当たりにした。

 6年前から毎年講習会を開催している地元の地域おこし団体「やったろうde高島」と宮崎大海洋生物環境学科の深見裕伸教授(51)によると、同海水浴場内には、水深約5メートル以内に12科28属40種のサンゴが生息。海岸から近い場所で多様なサンゴが観察できる場所として人気を集めている。

 しかし今年、大規模な白化を確認。同団体の小村秀蔵事務局長は「これまでも白くなったサンゴを見かけたことはあるが、ここまで白化したのは初めて」と話す。動物であるサンゴは「褐虫藻(かっちゅうそう)」という藻類を体内に共生させ、栄養分をもらうことで生きている。しかし、海水温の上昇などで褐虫藻が十分な光合成ができなくなるとサンゴは褐虫藻を吐き出し、白い骨格が透けて見えるようになる。これを白化現象といい、海水温が30度以上で進行。28度以下になれば1カ月以上かけて回復するが、白化が長引くと栄養がもらえず死滅する。

 9月21日、受講者約40人と一緒に記者もシュノーケリングを体験した。ウエットスーツを着用して泳いだが、約30度の海水温は「ぬるい」と感じた。

 海岸から約10メートル進んだ所でサンゴが見えてきた。本来のサンゴの色は茶褐色だが、大小問わず真っ白になったサンゴが散見された。これまで2回、環境講習に参加したという橋淑笑さん(42)、実花さん(6)=聖マリア学院小1年=親子も「毎年サンゴの成長を見に来ていたけど、白くなっていてびっくりした」と驚きの表情だった。

 深見教授によると今回、全体の約5割で白化が確認された。水深が浅い場所のテーブルサンゴは8割ほどが完全に白化していたという。今年は台風の接近が少なかったため、海水がかき混ざらず海水温が下がらなかったことも要因とみる。死滅したサンゴは確認されなかったが、深見教授は「異常な状態」と危惧する。

 同海水浴浴場内には2018年、橋の施工などを手がける民間企業で、同団体と連携した取り組みを進めるエム・エムブリッジ(広島市)などによって「サンゴ生育棚」が2基設置された。生育棚に取り付けたサンゴは、通常と比べ1・5~2・5倍ほど早く成長するとされ、現在8基設置している。この日、設計に携わった同社の木原一禎さん(59)が生育棚を確認したところ、ここでも一部白化が見られたという。

 今後、気温とともに海水温も下がることで、一部白化したものは回復する見込みだが、完全に白化したものは死滅する可能性もある。小村事務局長は「人の手で環境が破壊されるのが最も怖い。地球温暖化には人間にも原因がある。みんなが環境問題について考えてほしい」と訴えている。