諫早総合病院の認知症疾患医療センター 多職種連携が定着 早期発見・治療に成果 長崎

長崎新聞 2025/04/30 [10:00] 公開

諫早総合病院認知症疾患医療センターの実績

諫早総合病院認知症疾患医療センターの実績

  • 諫早総合病院認知症疾患医療センターの実績
  • 医療機関などとの調整を担う認知症疾患医療センター=諫早市、JCHO諫早総合病院
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3人に1人が認知機能にかかわる症状があるという認知症。JCHO諫早総合病院(長崎県諫早市永昌東町)の認知症疾患医療センターが、2014年10月の開設から10年が経過した。県央地区の医療機関などと連携し、早期発見・治療に成果を上げる。昨年4月から新規治療薬(レカネマブ)の導入例も増え、症状の進行抑制につながっている。

 認知症疾患医療センターは相談や鑑別診断を行う県指定の認知症専門医療機関で、県内に9カ所ある。県央地区を担当する同病院は、他の医療機関からの紹介で受診する患者らとの調整などを担う。
 同病院によると、19年度の相談は3582件で、コロナ禍に入った20年度は相談、外来患者、鑑別いずれも3割程度減少。感染拡大による外出制限が長引いた22年度の相談は過去最多の4171件に上った。
 22年度以降でみると、相談が約1200件減り、外来患者は同程度で推移。鑑別が26件増えた。長郷国彦院長は「認知症への社会の関心が高まるとともに、地域の医師、歯科医、薬剤師らとの多職種連携が定着し、センターへの相談より前に、かかりつけ医らが気づき、早期受診・治療に結びついている」と分析する。
 諫早医師会では物忘れチェックや物忘れ相談医一覧をホームページに掲載。美南の丘クリニック(小川町)の松尾彰医師は、諫早総合病院や開業医らの認知症疾患検討会に参加し、事例研究や情報共有を進める。「症状の原因を明確にしてもらえるので助かる。他職種の医療従事者らと顔の見える関係が築け、相談しやすい環境」という。
 諫早総合病院では昨年4月から認知症の新規治療薬(レカネマブ)を市内で唯一導入。アルツハイマー病の主な原因とされる脳内に蓄積したアミロイドβを取り除くことができる。3月までで24例(アルツハイマー型認知症11例、軽度認知障害13例)の実績があり、8割程度が症状の進行抑制につながっている。
 しかし、懸念材料は残る。諫早市の50年の総人口は20年比で約4万人減だが、75歳以上は約6千人増と推計される。長郷院長は「今後、医療需要は減少するが、介護需要は増加する見通し。認知症の早期発見・治療には医師、歯科医、薬剤師だけでなく、介護施設や介護従事者との連携が重要になる」とみている。