波佐見高、ハウステンボスで就業体験15年 長期休業中に有償で…県内定着にも成果 長崎

長崎新聞 2025/03/18 [11:38] 公開

HTBの若手社員(手前)と入室状況を確認する田平さん=佐世保市ハウステンボス町

HTBの若手社員(手前)と入室状況を確認する田平さん=佐世保市ハウステンボス町

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東彼波佐見町の長崎県立波佐見高(永田英樹校長、232人)は、佐世保市のテーマパーク、ハウステンボス(HTB)と有償型の「探究型インターンシップ(就業体験)」を始めて15年となった。商業系への就職を望む生徒が夏休みなどの長期休業に就業し、社会人マナーの習得や自己実現に生かす取り組み。本年度までに延べ548人が参加し、記録が残る2015年度以降、二十数人がHTBに就職するなど若者の県内定着にも成果を上げている。
 1月3日、HTB内のホテルアムステルダム。2年の田平亜姫(あき)さん(17)はホテルスタッフの制服に身を包み、若手社員と空室状況を確認していた。田平さんは冬休みの間、宿泊客の荷物を運ぶ係などを務めた。
 同校の就業体験は希望する1、2年生とHTBの間で雇用契約を結ぶ。無償でなく適正な賃金を得ることで、主体性やチームの一員として働く責任感を育み、就職活動に向けたコミュニケーション力の向上を目指している。アルバイトと異なるのは就業体験終了後、生徒とHTB、同校の3者で活動を振り返り、今後の進路や教育にフィードバックする点だ。
 同月7日、同校であった体験報告会。田平さんは「お客さまの『ありがとう』がうれしかった。でもスタッフの方と比べれば言葉遣いがまだまだ。勉強して自分を高めたい」と言葉に力を込めた。昨年の冬休み期間中、同校生13人がHTB内の飲食店や入場口などでの接客、客室清掃などを担った。HTBは多様な業態があり、生徒の特性に応じた体験を可能にしている。
 同校の就業体験が始まったのは2010年。本県初の民間出身の県立高校長として赴任した下春雄二さん(71)=長崎市、元十八銀行役員=の発案だった。「生徒が社会に慣れていないと感じた。学校は勉強する場だが、経験を通じて可能性を伸ばしたい」。旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)傘下で再建を始めたばかりのHTBに打診。「2、3日程度の就業体験は『やらされている感』があり、疑問を感じていた」。有償型の就業体験を導入した経緯を振り返る。
 受け入れ側の利点について、HTB人事研修課チーフ、岩井杏菜さんは「入社1年目の社員が生徒の世話役を担うことで、教える側となり、仕事内容を振り返ることができる」とし、「裏方も含めてHTBを知り、地元に誇りを持ってくれたら」と期待を寄せる。
 永田校長は「始めた当時、革新的な取り組みだったと思う。企業と学校双方に利点があり、何よりも自分探しの中にある生徒にとって、教室では学べない貴重な時間」と話した。