長崎バス 過去最大規模の路線廃止 影響大の野母崎地区…代替手段確保も残る不安

2024/01/04 [10:30] 公開

4月に路線バスの運行が廃止される岬木場停留所=長崎市脇岬町

 長崎自動車(長崎市、長崎バス)は3月末、市内を中心に路線バス16区間32停留所を廃止する。慢性的な運転手不足に「2024年問題」がのしかかり、過去最大規模の路線廃止を余儀なくされた。影響が大きい野母崎地区では、コミュニティバスによる代替が決まったが、持続可能性には依然として不安が残る。地域社会の“足”は岐路に立っている。
 昨年11月末の午後、市中心部からのバスが川原公園前に着くと、買い物袋を提げた3人が降車した。ここから終点、岬木場の集落までの4.9キロが廃止区間。途中の木場公民館で残りの乗客3人が全員降りた。岬木場でバスは20分ほど待機し、乗客ゼロのまま折り返し出発した。
 岬木場には、これ以外に2路線がある。一つは、恐竜パーク前を経由する南回りだが、岬木場-諸町の5.1キロが同時廃止される。長崎バスによると、いずれの停留所も平日の利用者数は1便当たり1人未満だった。
 もう一つは、市の補助を受け長崎バスが運行するコミュニティバスだ。しかし路線バスが廃止されれば、市街地までの所要時間が長くなり、乗り換えも必要となって利便性が著しく低下する。バス通学の中高生もいるため、住民は市に路線維持を要望していた。市と長崎バスが協議した結果、一定の利用を見込める時間帯に限り、現行のコミュニティバスを廃止区間まで延伸することにした。
 市はコミュニティバスの赤字分を補てんしている。だが路線を維持する上で最大の問題はコストではなく、運転手の確保だった。金原哲治・市公共交通対策室長は「岬木場地区にはもともとコミュニティバスがあり、その運転手の拘束時間にも余裕があるという好条件が重なり、実現できた。廃止路線の存続を求める地域は他にもあるが、同じような対応は難しい」と理解を求める。
 運転手の不足や高齢化は、コミュニティバスに代わっても問題として残る。岬木場地区の木村春幸自治会長(66)は「利用者が少なければまた廃止となるかも」と心配し、地区内や近隣自治会に積極的な利用を呼びかけた。「75歳前後が多く、本当にバスが必要になるのは免許返納者が増える5~10年後だろう。それまで維持しなければ」
 長崎バスによると、全路線で現行ダイヤを維持するには運転手23人が不足。残業や公休日出勤で対応しているが、労働時間規制が強化される4月以降は、さらに逼迫(ひっぱく)する。今後も減便や路線廃止を視野に入れた見直しは避けられない。
 岬木場を含む16自治会でつくる高浜地区連合自治会の後藤昭彦会長(63)は「同じ市内なのに中心部にばかり投資が進み『野母崎は捨てられている』と言う住民は少なくない」と地域の不満を代弁。利用者の少ない路線を維持できない民間事業者の事情に一定理解を示す一方、「だからこそ行政は高齢化が進む郡部のアクセスを確保する努力を忘れないでほしい」と話す。

野母崎・岬木場周辺のバス路線の変更