観光活性化 国際交流に一役 「ナガサキウオークス」 市民通訳ガイドが訪日客案内 地元住民の視点で

2023/12/16 [12:00] 公開

シンガポールから訪れた訪日客を案内する吉田さん(左)=長崎市松山町、平和公園

 新型コロナウイルス感染症の5類移行で、インバウンド(訪日客)需要の回復が期待される中、長崎大経済学部卒業生らでつくる公益社団法人瓊林会(喜多村円会長)が運営する英語ガイド事業「ナガサキウオークス」で、市民通訳ガイドが長崎観光や国際交流に一役買っている。
 「ようこそ、長崎へ」。今月12日、JR長崎駅内の長崎市総合観光案内所前。シンガポールから訪れたビンセント・ラオさん(50)家族を、ガイドの吉田千夏さん(42)=西彼長与町=が英語と飛び切りの笑顔で出迎えた。
 ラオさんは妻と10代の娘2人の計4人で約1カ月間の日本への家族旅行を計画。長崎への原爆投下については歴史の授業で学ぶが、実際に現地を訪れ、娘たちに肌で感じてもらいたいと初めて長崎を訪れた。
 3カ月ほど前からメールで希望を伝え、事務局や吉田さんと行程などをやり取り。作成したプランに沿って吉田さんの案内で平和公園や長崎原爆資料館などを巡った。ラオさんは「世界で紛争が絶えない中、長崎を訪れ、学ぶことは意味があると感じた。(吉田さんは)事前にいろいろと準備をしてくれ、良いガイドだった」と話した。
 普段は英語講師をしているという吉田さんはこの日がガイドデビュー。「観光で訪れた海外の人と交流したいというのがきっかけ。生まれ育った長崎の歴史について知らないことがたくさんあることを痛感した。しっかり勉強していきたい」と語った。
 同事業は2018年、改正通訳案内士法施行で、それまで国家資格保有者に限られていた有料での通訳ガイドが自由化されたことを受けて開始。所定の研修を受けた30~80代の男女23人が現在登録している。
 英文のウェブサイトなどで情報を発信。平和公園周辺や出島など基本4コースを設定し、事前にメールでやり取りすることで、ニーズに合わせた独自のプランをつくることができる。
 18年9月に受け入れを始め、19年度にかけ、計14カ国から訪れた100人を案内した。コロナ禍で受け入れを中断していたが、本年度は4月から12月末まで米国など計6カ国から約100人を予定する。
 コーディネーターを務める金山榮さん(76)は「地元住民ならではの視点での街歩きなど、多様な人材に登録してもらえたら。海外に興味がある人はぜひトライを」と話す。
 同法人ではガイドを募集中。長崎市やその近郊で暮らし、日常会話程度の英語が話せる18歳以上が対象。問い合わせはメールで同法人(info@keirinkai.or.jp)に。