長崎市役所の駐車場 料金の減免なぜできない? 公平性か市民サービスか…踏み切れない事情

2023/12/15 [11:00] 公開

原則有料となっている長崎市役所駐車場=長崎市魚の町

 開会中の長崎市議会一般質問で、議員2人が市庁舎の駐車場料金の減免措置について質問した。市民サービスとして減免を求める議員側に対し、市側の答弁はほぼゼロ回答。市側にその“かたくなさ”の理由を取材すると、「公平性」などで減免に踏み切れない背景も浮かび上がった。
 11日に登壇した木森俊也議員(市民クラブ)は「市民の税金で建てた庁舎。(無料化や1時間無料など)市民に還元すべきでは」と問い続けたが、市側は「慎重にならざるを得ない」と繰り返した。
 長崎県と同市以外の20市町に来庁者用駐車場の運用について尋ねたところ、いずれも用務で来た場合は無料だった。佐世保、平戸両市は窓口での無料処理が必要。五島市では地域の要望などもあり、開庁時間外は飲食店の客ら向けに開放しているという。2018年に新庁舎が開庁した県は当初、県庁利用者以外は有料だったが、実証実験を経て、一律で1時間無料となった。
 長崎市役所の来庁者用駐車場は145台分。最初の30分まで140円で、その後は30分ごとに130円が加算される。市議の利用、自治会業務や表敬などで利用した際は無料処理、障害者手帳所持者は4時間まで半額減免されるが、その他は原則有料だ。
 他自治体に比べ、同市は公共交通網が発展している背景もあり、市が旧庁舎時に実施したアンケートでは、来庁者のうち公共交通(バス・電車・タクシー)を利用した人が約45%で、車は約27%だったという。駐車料金の減免を実施すると、公共交通で来庁した市民との不公平感が生じると指摘。駐車場の維持管理にも費用がかかるため、受益者負担を強調する。
 さらに市は、無料化で満車になる可能性が高まり、駐車待ちによる周辺道路の渋滞発生や、近隣の民間駐車場の経営への影響も懸念。公共交通の利用促進を図る必要もあるとする。
 7日に登壇した池田章子議員(市民クラブ)が訴えた「市の活動に協力する団体のボランティアスタッフの減免」については「無料化の可能性を検討する」と多少の歩み寄りを見せた。
 ただ、市は「『ここを無料化すればこっちも』となり、際限なく対象が広がる可能性がある。線引きは難しい」と慎重な姿勢を崩さない。木森議員が提案した実証実験については「駐車待ち渋滞により事故が起きる可能性もあり、簡単に実施できるものではない」。
 市民はどう考えるか-。4カ月の赤ちゃんを抱えた20代夫婦は車で来庁し、「公共交通の移動はまだ難しい時もある。1時間でも無料になればありがたい」。一方、1歳児と0歳児を連れて車で訪れた20代の母親は「『みんな平等』を考えると有料も妥当」と理解を示す。徒歩で来庁した70代男性は「展望フロアや食堂に来た人も対象にするかは検討が必要だが、利便性を高める市民サービスとして市役所に用事がある人は無料にしても問題ないのでは」と話した。