カネミ油症事件 発覚から55年 進む被害者の高齢化…五島市の被害者が語る現状

2023/10/11 [11:00] 公開

油症被害者の救済に向け、国などに診断基準の緩和を求めている旭梶山さん=五島市玉之浦町

油症被害者の救済に向け、国などに診断基準の緩和を求めている旭梶山さん=五島市玉之浦町

大きい写真を見る

 長崎県など西日本一帯で多くの被害者を出したカネミ油症事件は10日、発覚から55年がたった。認定患者の高齢化が進む一方、医療費の支給がない未認定患者や、患者の子や孫ら次世代の救済など今なお多くの課題が横たわる。五島市の被害者らは認定につながる診断基準の緩和など、早期の対応を国などに求めている。
 同事件は1968年10月、報道で発覚。大量の吹き出物や爪の変形、手足のしびれなどを訴える人が相次ぎ、全国で約1万4千人が被害を届け出た。原因は、カネミ倉庫(北九州市)製米ぬか油の製造工程で混じった鐘淵化学工業(現カネカ)製のポリ塩化ビフェニール(PCB)。後に猛毒のダイオキシン類に変化していたことが分かった。
 「油症の症状は人によってさまざまだから、病名だけで油症との関連を判断するのが難しい」。カネミ油症被害者五島市の会会長の旭梶山英臣さん(72)は認定が進まない現状を語る。加えて診断基準は、ダイオキシン類の血中濃度などで認定、未認定を厳しく線引き。未認定患者や次世代の救済の壁となっている。
 全国油症治療研究班(事務局・九州大)は2021年から次世代の健康影響調査を開始。旭梶山さんは「先天的な病気など顕著に症状が現れている人から段階的に認定してほしい」とし、3年目となる調査の行方を注視する。
 現在、同五島市の会会員約220人の平均年齢は約73歳。これまで国や原因企業への要望活動を展開する役割を担ってきたが、次世代が島を離れるなどして担い手が不足。役員は欠員が生じている。「引き継いで運動を途切れさせないように頑張らないと」。旭梶山さんは自らに言い聞かせるように語った。