「旧雨今雨(きゅううこんう)」という中国由来の四字熟語がある。旧雨は古い友、今雨は新しい友を指す。中国では「雨」と「友」とは発音が通じていて、「雨」は訪ねてくる友人の例えになったという▲唐の詩人、杜甫(とほ)の一編にある。〈旧雨来たり、今雨来たらず〉。杜甫は病に伏し、外はずっと雨。昔は雨でも訪ねてくれる友人がいたが、今はいない。そう嘆いている▲日本と中国は古い付き合いだが、今は残念ながら〈旧雨来たり〉の間柄とはいえない。先進7カ国(G7)広島サミットに合わせるように米原子力空母が佐世保に寄港した。とりわけ中国に対し、安全保障での結束を見せつけるためともいわれる▲一方で、中国と対話を続ける、とG7は硬軟を織り交ぜた姿勢も見せる。米英仏など「西側の一致団結」を示してサミットは幕を下ろした▲その間に、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と岸田文雄首相が広島で、韓国人原爆犠牲者の慰霊碑にそろって花をささげた。土砂降りの雨が続いた日韓関係の一つの変化だろう。ここ2カ月のうちに3度の会談も果たした▲こうした尹大統領の姿勢に、韓国では異論も強いという。雨脚は弱まったが、やんではいない。雨だからこそ訪ねましょう。どうぞいらっしゃい。「旧雨」を思わせる今の日韓関係に、晴れ間が広がるのはいつだろう。(徹)
旧雨今雨
長崎新聞 2023/05/23 [09:35] 公開