減る書店・・・守れ活字文化 長崎県内1980年代の4分の1 地場大手は経営強化、個人店は個性で存在感を

2023/05/01 [10:30] 公開

日書連加盟店数と県書店商業組合加盟店数

 全国で「本屋さん」が姿を消しつつある。通販や図書館との競合を強いられ、長崎県内店数もピーク時の4分の1になっている。そんな苦境で、地場大手の書店は地域の活字文化を守る気概で経営基盤を強化。個人経営店は個性で存在感を示そうとする。全国の書店とも連携している。
 日本書店商業組合連合会の加入数は1986年時点で1万2953店に上ったが、昨年は2803店にまで激減。県書店商業組合の加入数も80年代の約140店をピークに減少し昨年は35店となった。
 「本屋の8割、9割くらいは赤字だと思う」。同組合の中山壽賀雄理事長は表情を曇らせる。国内出版社から書籍を仕入れて販売する際、書店の粗利は定価の22~23%。人件費や光熱費が上昇しても書籍の価格は一定で、「ずっと粗利率は変わっていない。取り分を増やしてもらわないと本屋だけの経営ではきつい」と実情を訴える。

 メトロ書店(長崎市)は3月、同じグループ会社でソフトウエア開発のメトロコンピュータサービス(同)と合併し、新会社「METRO PLUS」を設立。資本を一本化して経営合理化を図った。同社の川崎孝会長は「活字文化を継承するため、ITの力を活用しながら書店を続けていく」と力を込める。
 書店が減る原因を、同社の本田多紀子専務は三つ挙げる。一つはインターネット通販大手アマゾンの台頭。ユーザーが新刊本を事前に予約した場合、地方の書店だと発売日から3、4日かかるのに対し、アマゾンなら発売当日に届く。
 二つ目は図書館の充実。リニューアルや大型化に伴い新刊を置くようになり、漫画や雑誌など蔵書の種類も豊富になった。三つ目は万引の横行だ。書店から新刊本を盗み、全国チェーンの新古書店に買い取らせる「違法なビジネスモデル」が存在するという。

「長崎の本」を集めたコーナー=長崎市尾上町、メトロ書店本店

 さらに、近年は電子書籍が普及。書店業界は厳しさを増すが、本田専務は「書店には本との偶然の出合いがある。私たちリアル書店にはその場所を守り続けていく使命がある」と語る。アミュプラザ長崎内のメトロ書店本店は、長崎駅に近い立地を生かし観光客向けに「長崎の本」コーナーを設置。常時約150種類の書籍をそろえる。

 組合未加入で個人経営の書店も存在感を示そうとしている。同市中川2丁目で2021年に開店した「本屋ウニとスカッシュ」はセレクトショップ。詩集やイラスト集など店主の河原康平さん(43)が目利きした「気楽に読める本」が並ぶ。短歌会や占いなどのイベントも企画する。
 20年にスタートし全国393店(1月23日現在)で展開する「御書印プロジェクト」(事務局・小学館)に、県内では同店とメトロ書店が参加している。読書ファンは参加店を巡り、オリジナル印や、小説などから引用した店員の一筆を集めて楽しめる。河原さんは「本を手に取るきっかけになると、うれしい」と話す。