被爆地の思い抱いて
 =高校生1万人署名から= 3

今年7月、実行委に参加した丸尾有香さん(中央)。「先輩の姿を見て、自分もやらなきゃと思った」=長崎市平野町、長崎原爆資料館

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被爆地の思い抱いて =高校生1万人署名から= 3 継 承 「自分がやらなきゃだめ」

2001/08/06 掲載

被爆地の思い抱いて
 =高校生1万人署名から= 3

今年7月、実行委に参加した丸尾有香さん(中央)。「先輩の姿を見て、自分もやらなきゃと思った」=長崎市平野町、長崎原爆資料館

継 承 「自分がやらなきゃだめ」

「一人だからって、できないことはない」。一学期の終業式を前に、丸尾有香(15)=長崎明誠高一年=は学校側に「八月九日の登校日に校門前で署名活動をさせてほしい」と申し出た。丸尾は同校からただ一人の「高校生一万人署名」実行委員会のメンバーだ。

丸尾には以前、心を揺さぶられた言葉があった。「本当に平和な世の中にするために活動できる人が必要」。昨年十一月、長崎市内であった非政府組織(NGO)集会の青少年フォーラムに参加したときのこと。前平和大使の石司真由美が言った言葉だ。

二人はフォーラムのスタッフだったが、このときが初対面。石司は「大使は平和に対して自分の意見をはっきり言える人」など、当時中学生だった丸尾に大使の役割について教えてくれた。約二十分の短い会話だったが、石司の真剣な表情に「自分も平和活動をやってみたい」という気持ちが強まった。

高校生活にも慣れた今年七月、長崎市筑後町の県教育文化会館であった実行委の会合に初めて参加した。そして、約九千六百人分の署名が実行委に届いていることを知り、驚いた。「活動は新聞やテレビで知っていたけど、本当に一万人集まるのか半信半疑だった」からだ。

実行委の活発な意見のやりとりに、メンバーの平和に対する熱い思いを肌で感じた。「高校生だってやろうと思えば多くの人の心を動かすことができる。次第に自分も何かやらなきゃと思うようになった」

「高校生一万人署名」は七月十一日、予定より一カ月早く目標の一万人を達成した。しかし、メンバーからは「集まった署名はメンバーやその友人が通う高校、修学旅行生がほとんど。本当の意味で県内全域に広がったとはいえない」との声もある。

だが、丸尾は別の受け止め方をしている。「平和を願う高校生の署名が一万人分集まったのは事実。先輩たちは基礎を築いた。その心を私たちが引き継ぎ、広めていけばいい。活動は始まったばかりなのだから」

登校日に校門前で署名活動ができるかは分からないが、もし学校の許可が出なくても校外で一人でもやるつもりでいる。「平和の問題は人に任せっきりではいけない。自分がやらなきゃだめなんです」。今年一月、「核兵器廃絶を自らの手で実現しよう」と集った実行委の思いは、確実に受け継がれようとしている。(文中敬称略)