「小値賀のために」若者が活躍できる古里を 小値賀町議会の行方・3 選挙戦の可能性も

2023/02/09 [10:40] 公開

模擬公聴会で意見を述べる小学生(左)ら=小値賀町議会議場

 昨年12月5日、北松小値賀町議会議場の傍聴席には、大人に交じって町立小値賀小の6年生15人が座った。議員の一般質問が終わると、横山弘藏議長(71)が「これより模擬公聴会を開きます」と告げ、傍聴者に発言を促した。
 手を挙げた中野夏希さん(12)は、一般質問で質疑があった築48年の町離島開発総合センターの存続について意見。解体すれば太鼓や合唱の練習場がなくなるとして「改修してより良い小値賀町を目指して」と求めた。岩永大空さん(12)は「通学路に危険な場所がたくさんあるので直してほしい」と訴えた。
 同小の議会傍聴はキャリア教育の一環だ。同様に、町立小値賀中の生徒は同19日、模擬議会で一般質問を体験。議員のなり手不足解消策として「抽選で臨時議員を決め、議会を体験させれば重要性を実感できるのでは」とのアイデアを出す生徒もいた。県立北松西高の生徒は、実際に政策を立案し町に提言している。
 近年、若い世代が町議選に出ることはなかったが、離れても古里への思いは強い。長崎大医学部に進学した博多屋心さん(19)は北松西高生の頃、友人と町の将来について語り合った。「島に帰ったら町長になりたい」という女子がいた。自身も医師を志し「一人前になって、いずれ小値賀のために働きたい」と考えている。
 彼らに帰郷し活躍してもらえるような環境をつくるには、地元議会がしっかり機能しなければならない。
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 昨年来、町議選で立候補者数が定数8を割り込むとの危機感が広がったが、議会関係者らによると、新聞報道や立候補を呼びかける「議会だより」の効果もあってか、にわかに動きが出てきた。
 現時点では現職7人のうち、出馬の意向を固めたのは3人。2人が勇退する方向で、残る2人は態度を明らかにしていない。新人は農業男性(55)と県北在住だった看護師男性(36)が挑む構えを見せている。
 農業男性は13年前、大阪から親の故郷の同町に移住。選挙に出た経験はないが、決断した胸中をこう明かす。「議員が足りないから、自治体として自立できないとか、どこかと合併せざるを得ないとかは、あっちゃいけない。落選してもいいから手を挙げようと思う。『おまえには小値賀を任せられん』と触発される地元の人が出てくれば、それでいい」
 なり手不足を新聞で知ったという看護師男性は、立候補を前提に1月、住民票を同町に移した。公職選挙法で規定された3カ月以上の居住条件を満たすぎりぎりのタイミングだった。縁もゆかりもないが、「地方自治の根幹を揺るがす事態。『よそ者が何しに来たのか』と言われる覚悟で来た。よそ者だからこそ言えることもあるはず」と語る。
 出馬意向の5人以外にも、元職や若者、新たな移住者ら複数の名前が取りざたされ、選挙戦になる可能性も浮上。ある有権者は「なぜ議員になりたいかを聞けるといい」と期待をつないでいる。