長崎県五島市富江町の黒島で唯一の島民だった70代の女性が今夏、亡くなり、同島は無人島となった。市によると、同市内で島の住民がいなくなるのは奈留町の葛島で集団移転があった1973年以来、約半世紀ぶり。
過疎・少子高齢化による人口減少が顕在化した形。黒島の無人島化により同市の有人島は10となった。11月末現在、橋が架かっている島山島を除き、人口100人以下の島は赤島や蕨小島(わらびこじま)など六つある。
黒島は富江港から東に約6キロ。面積約1平方キロメートル。市や郷土誌などによると、70年前後には36世帯が暮らし、人口は約200人いたとみられる。漁業などで生計を立てていたが、進学や就職などで島外への流出が続き、ここ数年は1人になっていた。市営定期船は赤字が膨らみ、減便などで対応していたが、昨年9月末に廃止された。
関係者によると、島民の女性は7月下旬、市内の病院で亡くなったという。黒島の元島民の女性(91)は「島民の多くが高齢になり、子どもらと一緒に島を出ていったと聞いていた。先祖の墓は気になるが、家は壊れているし、もう行くことはない。(無人島化は)仕方ないこと」と言葉少なだった。
同市では岐宿町の姫島が65年に集団移転により無人化。かつて約300人が暮らした奈留町の葛島も73年に集団移転で住民がいなくなった。同市は「離島振興法、国境離島新法などを活用しながら、急激な人口減少や無人化させない取り組みを進める」としている。