針尾無線塔

2022/10/31 [12:08] 公開

 佐世保市の針尾島に高くそびえる3本の塔。大正時代に海軍が建設した旧佐世保無線電信所(通称・針尾無線塔)だ。真珠湾攻撃を命じる暗号電文「ニイタカヤマノボレ」を発信したとの説もあり、11月に完成から100年を迎える▲無線塔としての役割を終え、解体の危機もあったが、建造物としての価値が認められ、2013年に国が重要文化財に指定した▲指定を機に、地元の人たちが保存会をつくり、施設の管理などをしている。会長を務める田平清男さん(80)を訪ね、興味深い話を聞いた▲「地盤の高さが違うので、3本の高さ(長さ)は微妙に違う」「周波数は軍事機密だったので不明のまま」「事故を防ぐため、3号塔には航空障害灯が設置されている」▲保存が決まったときの話になり、「地元の人は喜んだでしょう」と尋ねると、「戦争遺構なので、みんながいい思いを持っているわけではないだろう」と意外な答えが返ってきた。田平さん自身、父親は生まれる前に出征し、現在のミャンマーで戦死している▲無線塔一帯では来月から建設100年記念祭として、コンサートやモールス信号体験、ナイトクルーズなど、さまざまなイベントが行われる。巨大な塔を見上げながら、戦争の歴史や平和の尊さについて思いを巡らせるいい機会かもしれない。(豊)