参院選長崎 深まらぬ「IR誘致」論戦 訴え目立たず、ジレンマの党も

2022/07/02 [11:30] 公開

佐世保市内で候補者の演説を聞く人々(左上)。ハウステンボス(右下)へのIR誘致を巡る議論は深まっていない

 長崎県が佐世保市のハウステンボス(HTB)への誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)。IR誘致には賛否の声があり、参院選長崎選挙区(改選数1)での論戦が予想された。しかし、推進派の自民や日本維新の会の候補者がIRの効果を訴える場面は目立たず、立憲民主も賛否を明示していない。物価高などの課題に押される形で、それぞれの主張に温度差もあり、議論が深まっていない。
 22日夕、佐世保市中心部であった自民新人、山本啓介候補(47)の出陣式には、IR誘致に取り組む地元政財界の面々が集まった。マイクを握った山本氏は政府と地域をつなぐパイプ役になると主張したが、国策のIRには言及しなかった。
 同市に入った26日の街頭演説でも主なテーマは物価高騰対策など。個人演説会でIRに触れる場面はあるものの、ある自民関係者は「人口減少対策の切り札になる。県民の理解を促進するためにもっと語ってほしいのだが…」と物足りなさも口にする。
 全国では大阪府・市もIR誘致を目指しており、維新が後押しする。ただ、維新新人の山田真美候補(50)が長崎IRについて積極的に語る様子はない。陣営関係者は「IRよりも先に、物価高騰など生活に直結する問題を議論する必要がある」と説明する。
 立民は、大阪IRについて「土壌整備に多額の公金が支出される」などと問題視。反対の立場を鮮明にする。その一方、4月の県議会で長崎IR計画案には賛成した。こうした事情があるためか、立民新人の白川鮎美候補(42)は賛否を明言していない。25日、長崎市での総決起集会に出席した立民の泉健太代表は、報道陣にスタンスを問われると「長崎の状況をつぶさに見ていない」と言葉を濁した。
 白川氏を推薦する社民にもジレンマがある。県議会でギャンブル依存症などを懸念して長崎IR計画案に反対票を投じたが、佐世保市議会では賛成に回った。社民関係者は「地元には賛成の声が一定ある。無視できない」とつぶやく。
 このほか、共産新人の安江綾子候補(45)は依存症や治安悪化などの危惧から「反対」の姿勢を打ち出す。政治団体「参政党」の尾方綾子候補(47)も海外で失敗しているなどとして「カジノは要らない」と訴える。NHK党の大熊和人候補(52)は誘致賛成の考えだが、有権者に直接訴える運動はしていない。
 IRは、交通渋滞や青少年育成など周辺地域の生活環境に悪影響を与える可能性もある。HTBに隣接する江上地区自治協議会の浦憲治会長は「IRは住民の暮らしを大きく左右する。どのように向き合うのか候補者はしっかり議論してほしい」と求めている。