遠藤周作の未発表3作 戯曲集「善人たち」出版

2022/05/04 [11:11] 公開

「善人たち」の表紙

 小説「沈黙」などで知られる長崎県ゆかりの作家、遠藤周作(1923~96年)の未発表戯曲で、昨年末に発見が公表された3作品を単行本化した「善人たち」(新潮社刊)が出版された。
 3作品は表題作「善人たち」をはじめ「切支丹大名・小西行長『鉄の首枷』戯曲版」と「戯曲 わたしが・棄てた・女」。長崎市遠藤周作文学館が調査している資料から、直筆の草稿や秘書による清書が見つかった。いずれも70年代後半の執筆とみられるが、未発表だった理由は不明。公表後、3作品それぞれに文学誌などに掲載された。
 「善人たち」は太平洋戦争の開戦直前、米国のクリスチャン一家に身を寄せた日本人留学生が味わった「善意」を描く。「切支丹大名-」は、関ケ原の戦いで敗軍の将として処刑される小西行長の内面を描写。「-わたしが・棄てた・女」は感動的な内容の同名小説を戯曲化している。
 同文学館の川崎友理子学芸員は「戯曲になじみが薄い人も多いと思うが、遠藤の戯曲はメッセージのこもったせりふの応酬が続き、読み物としても分かりやすく面白い」と話している。
 四六判286ページ。1870円。