11月1日は灯台記念日 県職員の「灯台女子」が語る魅力 孤高の姿、巡る楽しさも

2021/10/31 [12:00] 公開

牧田さんがお薦めする灯台の一つ、口之津灯台(写真は牧田さん提供)

 11日1日は「灯台記念日」。1868年のこの日に、日本初の洋式灯台「観音埼灯台」(神奈川県)が起工したことに由来している。灯台は、船舶の安全航行にとって重要な施設だが、近年は観光資源として活用を模索する動きもある。「灯台女子」を自称する県職員、牧田悠依さん(35)=長崎市=に灯台の魅力を聞いた。
 「この灯台の写真は年賀状にした」「ここからの景色がたまらないんだよね」。牧田さんの声は弾んでいた。
 灯台にのめり込んだのは大学生の時、母親が「老後は灯台に住みたい」と言ったのを聞いたことがきっかけ。建築を学んでいた牧田さんは、本当に灯台に住めるのか疑問に思い、卒業設計の題材に灯台を選んだ。
 調べてみると、国内の灯台は敷地内に灯台守が暮らす「吏員退息所」を設けているのがほとんどで、灯台の内部に居住スペースを備えた一体型は少ないことが分かった。明治期は灯台守に外国人を雇っていたが、徐々に日本人が担うことに。戦後になると無人化が進み、2006年、五島市男女群島の女島灯台を最後に全ての灯台から灯台守がいなくなった。居住施設は自治体に払い下げられ資料館に改修した建物もある。
 卒業設計では、伊王島灯台(長崎市)をベースに、地下にチャペル、近辺にホテルを備えた「泊まれる灯台」をコンセプトに制作。卒業後も精力的に灯台を巡り、延べ20カ所以上を訪れた。しかし、岬の突端など辺ぴな場所にあるのが灯台。目的地にたどり着くのも一苦労。「めちゃめちゃ過酷」だが、獣道(けものみち)の先にある孤高のたたずまいのかっこよさや、全部回りたくなるコレクション的な要素にひかれて灯台目がけて旅に出てしまう。年賀状に載せるその年に行った“推し”の灯台を選ぶのがとても楽しいという。

灯台に抱きつく牧田さん=山口県下関市、あるかぽーと東防波堤灯台(写真は牧田さん提供)

 県内であれば伊王島灯台もお気に入りだが、南島原市の口之津灯台も好きな場所。モデルコースは、テークアウトしたコーヒーを片手に口之津灯台でのんびり。近くの早崎漁港周辺の自然を楽しみながらまち歩き-。「周りのロケーションも含めて灯台の魅力」としみじみと話す。
 公益社団法人燈光会によると近年、灯台の活用についての議論が活発に。牧田さんは「夜に光る灯台を見たいが、帰り道が怖くて日中に行く。私のような愛好家もいるから、そばにホテルやコテージといった泊まれる場所があるといい。結婚式は灯台の前で挙げるのが夢です」と、笑顔が光った。

◎本県254基、第7管区で最多

 公益社団法人燈光会によると、日本での西洋式灯台の誕生は、江戸幕府が1866年に米、英、仏、蘭の4カ国と江戸条約を締結し、灯台などを建てる約束をしたことが始まり。海上保安庁によると、国内の灯台は3月末現在で3125基。本県には254基あり、九州北部と山口県西部を管轄する第7管区海上保安本部内では最も多い。
 長崎、佐世保、対馬の3海上保安部の担当者にそれぞれ管内のお薦めの灯台を聞くと、長崎海保は映画「あなたへ」のロケ地になった長崎市の伊王島灯台や、映画「悪人」のロケ地になった五島市の大瀬埼灯台と回答。佐世保海保は大碆(おおばえ)鼻灯台(平戸市)のロケーションを推す。対馬海保では赤と白がトレードマークの対馬市の棹埼灯台。
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