衆院選 長崎1区 “安倍政治”巡り対決 初村陣営に強力な後ろ盾 批判票狙う西岡陣営

2021/10/23 [10:00] 公開

勝利を目指し拳を上げる安倍氏と初村候補(写真右)、玉木代表と支持を呼び掛ける西岡候補(写真左)=いずれも長崎市の鉄橋

 自民党の安倍晋三元首相が22日、衆院選応援のため、長崎県入りした。元政策秘書である長崎1区の党新人、初村滝一郎候補(42)にとって強力な後ろ盾。ただ、陣営内には「桜を見る会」などの問題がくすぶる安倍氏とのパイプが「『もろ刃の剣』になりかねない」という声もある。一方、野党側は“安倍政治”との対決構図を鮮明にし、批判票の取り込みを狙う。

 22日午後6時すぎ、長崎市中心部の鉄橋の上を覆いつくすように集まった聴衆に向け、安倍氏が売り込んだ。「私が1年で政権が終わった厳しい時期を支えてくれたのが初村。新しい力をこの長崎1区から誕生させてほしい」
 さらに、旧民主党からの政権奪還時に0.52倍だった正社員の有効求人倍率が1倍を超えた実績をアピール。「野党はアベノミクスで格差が広がったと言っているが、間違っている。みんなが仕事につけるようになった」と強調した。
 足を止めてスマホをかざす若者の姿もあり、陣営関係者は「さすが。これだけ集まれば無党派層にも初村の名前が広がる」とうなずいた。自民候補を長年支持してきた経済関係者も、初村候補の実力を疑わない。「野球で例えるならドラフト1位の即戦力。本県の企業にとっても、行政にとってもプラスになる人材だ」
 だが、安倍氏との強固な関係にはリスクも潜む。「自民は応援したいけど安倍さんは嫌い」。あいさつ回りの際にはそんな言葉もあったという。陣営が特に気をもむのは、勝敗の鍵を握る無党派層への影響。当初掲げたキャッチフレーズは「即戦力」だったが「安倍氏とのパイプを連想されるかもしれない」(陣営幹部)と懸念。途中で、若さをイメージした「明日への突破力」に変えた。
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 安倍氏がマイクを握る約6時間前。国民民主の玉木雄一郎代表が同じ鉄橋にいた。「これまでの政治を続けるか、国民のための信頼ある政治に変えるのかが最大の争点。長崎1区はその象徴的な選挙区だ」。今月3回目の来崎。森友学園を巡る公文書改ざんなどを挙げ、安倍・菅政権を「うそやごまかしの政治を続けた」と糾弾。初村候補について記者団に問われると「自民党政治の象徴だ」と切り捨てた。
 横に並んだ党前職の西岡秀子候補(57)も「コロナ禍で傷ついた経済はアベノミクスでは到底回復できない」と批判のトーンを強め、「1区の議席を決めるのは中央から来る大物議員ではなく、市民一人一人だ」と当てこすった。
 陣営関係者は「相手は(安倍氏の応援が)プラスだと思っているかもしれないが、こっちにこそプラスだ」とみる。一方、安倍氏は街頭演説前に県内各種団体の幹部と接触しており、別の西岡陣営関係者は「安倍氏に頼まれたとなれば重みがある。それで動くかもしれない」と警戒した。
 共産新人の安江綾子候補(44)の陣営幹部は、安倍政権時代の参院選広島選挙区の買収事件などを挙げ、「有権者には『安倍直結の政治でいいのか』と訴えていく」と話す。