「若い女性」なぜ県外流出? 地元離れた4人に聞く 「外の世界を見たい」進学や就職時に思い湧く 

2021/07/26 [11:30] 公開

「外の世界を見てみたい」。そう考え、長崎県外へ出る若い女性が少なくない(写真はイメージ)

 長崎新聞の県政担当記者として社会人キャリアをスタートさせ、7カ月が過ぎた。分からないことばかりの毎日だが、中村法道知事や県職員がよく口にする言葉が気になっている。「人口減少に歯止めがかからない」。しかも最近は「若い女性」の県外流出が目立つそうだ。私は地元の諫早高を卒業後、東京の大学に進学したが、就職は友人知人が多い地元しか選択肢になかった。どうして地元を離れるのだろう。4人の女性に聞いてみた。

◆古里の良さ
 最初に取材に答えてくれたのは、東京の大学病院の看護師で西海市出身の宮崎千夏さん(26)。長崎大を卒業後、昨年春に上京。「ずっと長崎に住んでいたので県外に出てみたかった」と言う。仕事に追われる毎日。「少しでも時間があれば休息に充てたい」と話す。患者と世間話をしていても土地勘がないため分からないこともしばしば。「なんで地元から遠い所で働いているのだろう」と自問することもあるという。
 就職前は東京に住み続けようかとも思ったが、今は縁もゆかりもない東京に永住するつもりはなく、いずれは九州に帰ろうと思う。それが長崎なのか福岡なのかは決めていない。看護師はどこでも働ける。ただ長崎出身の「彼」が関東で働いている間は東京で頑張るつもりだ。
 西彼時津町出身の森下茄穂さん(24)も宮崎さんと同じ理由で大学は福岡、就職は東京にしたという。大学では情報工学を学び、いわゆる「IT」系で働ける長崎の企業は思い浮かばず、2年前の春に上京した。
 だが通勤に満員電車で40~50分かかり、休日に出かけるとあまりの人混みに疲れ果てた。「東京は住む所ではなく、遊びに行く所」。会社に辞めると伝えたが、取引先から「長崎からのリモートワークでいいから続けてほしい」と引き留められ、今年から時津町の実家で在宅勤務をしている。
 実は辞めようと思った時、都会なのに住みやすかった福岡に戻る選択肢もあった。今は友人知人も多く、住み慣れた長崎でいいかなとも思っている。
 宮崎さんも森下さんも東京に出たことはマイナスではなく、古里の良さを認識できたので良かったと口をそろえる。

長崎県男女の転出超過数

◆国内は近い
 諫早市出身の森野乃香さん(23)は就職に英語を役立てたいと思い、長崎大多文化社会学部に進学。在学中、海外の留学生と頻繁に接し、自身もカナダ、中国、ラオスに短期留学した。国内はどこも近いと感じるようになった。
 今春、東京の化学メーカーに就職し、千葉県に住んでいる。福利厚生はしっかりしていて転勤は少ない。経営は安定しており、社員を大事にする社風が魅力。結婚、出産しても働けそう。できればこの会社でキャリアアップしたいと思っている。
 「仲の良い友人は九州にいて寂しくはあるが、就職すれば忙しく長崎にいてもなかなか会えないのではないだろうか」と話す。
 長崎市出身の高木萌絵さん(27)も長崎純心大に在学中、ニュージーランドに1カ月留学し、新しい土地や環境に触れる楽しさを知った。企業の合同説明会で人事担当者が仕事にやりがいを持っていると感じて見えた熊本県の食品会社に就職。仕事は充実していたが、身寄りのない伯母の病気が分かり看病が必要になったため、3年で退職し戻ってきた。その後、伯母は手術をして回復。高木さんは派遣会社に登録して建設関係の仕事をしている。

◆タイミング
 4人に共通するのは、進学や就職時に長崎を離れ、外の世界を見てみたいという思いが湧くことだ。それは私も同じだった。違う環境に身を置くことで、地元の良さが分かり、何かのタイミングで帰ろうと思うのだろう。ただ森さんのようにキャリア志向が強い人は都市部で働き続けるのかもしれない。
 要は地元に戻ろうと思った時、子育てをしながら働きやすいと思える環境が必要。森さんも千葉に居続ける理由の一つに結婚、出産後も働けそうな職場環境を挙げている。
 ただ宮崎さんと森下さんは長崎だけでなく都会の福岡も選択肢に挙げた。長崎に帰ろうと強く思える何かが必要だ。
 昨年度、県や各市町の窓口を通して長崎にUターンした計785人のうち、福岡からが最も多く235人。県は福岡市内の公共交通機関でUターンを促進する情報を発信している。県若者定着課は「県内でも女性が働きやすい職場は増えてきているので、情報発信に力を入れたい」としている。