長崎医療圏 入院が病床を実質上回る 市や県、第5波備え増床検討

2021/06/16 [10:22] 公開

第4波の長崎医療圏の病床利用状況

 新型コロナウイルスの第4波で4月下旬から感染者が急増した長崎医療圏(長崎市、西海市、西彼長与町、時津町)で、5月7~21日の約2週間にわたり、入院患者数が最大確保病床140床を実質的に上回っていたことが、長崎市の分析で明らかになった。圏域外への搬送、緊急的な増床、発症10日での転院システム導入によって乗り切ったが、市や県は次の第5波に備えて病床の積み増しを検討している。
 同医療圏では大型連休前から感染が急拡大し、5月4日には57人の感染が公表された。入院患者は7日に147人に上り、最大確保病床を上回った。このうち25人は圏域外の医療機関で受け入れてもらったが、その後も入院患者は増え続けた。
 県は12日から「緊急時対応」として同医療圏で新たに36床を確保し専用病床は計176床となった。入院患者は15日に過去最多の197人に増え、うち47人は圏域外の医療機関に入院。その後、患者数は減少に転じたが、21日まで最大確保病床140床を実質的に上回った。
 同医療圏では昨年暮れから年明けの第3波で、長崎大学病院や長崎みなとメディカルセンターなど四つの公的病院の専用病床が逼迫(ひっぱく)した事態を検証。発症から10日経過し感染力が弱まった患者を公的病院からバックアップ病院に転院させるシステムを、4月下旬の大型連休直前に稼働させた。長崎市によると、発症から10日経過した患者125人のうち、37人が転院。22人は圏域外の医療機関に搬送し、66人は主治医の判断で転院させなかった。
 市の担当者は「圏域外への搬送、緊急的な増床、転院システムで、医療崩壊寸前で乗り切れた。転院システムは運用開始直後に大型連休に入り、十分な準備期間は取れなかったが、一定機能した」と評価。今後は「一般診療とのバランスなどから公的病院の専用病床を増やすのは難しいが、それ以外の医療機関で病床を確保できないか検討したい」としている。県の中田勝己福祉保健部長も今月4日の記者会見で「さらなる病床の積み増しを検討している。広域連携もスムーズに進むよう体制を強化したい」と述べた。